2021年5月14日金曜日

朝倉ユキ 28歳 子供1人

とある5月5日のこどもの日の朝、朝倉ユキは同じ相撲クラブで仲の良い
谷川まゆみと一緒に海辺の大きなホールにそれぞれベビーカーを押して入った。

いつも好きなバンドやアイドルのコンサートを見に来る
相撲協会と神奈川県などが主催する
その年に子供を出産した女性たちだけが参加できる
"ママさん相撲"の大会がある。

まさかこんな形であのホールを自分が使う立場になる日が来るとは
夢にも思わなかった。

エントランス広場には
抱っこひもやベビーカーなどで思い思いに我が子を連れた
参加者と思われる女性たちが30名ほど
普段の大会にもマワシを入れて運ぶために持参している
大きめのリュックやキャリーケースも携えて集まっている

普段は家族や実家などに子供を預けたりする参加者も多いが
今日は日に日に重くなる我が子を背負って
相撲のマワシも持ってきているのを見て

母は強しだなとユキは思った。

今日は参加者1人1人に専属のベビーシッターが着いて
より参加しやすい環境が整えられている

こういうところに少子化対策への思いの強さが感じられる

まず最初に産後の身体についての講演を聴いたあとは

そのあと、県が用意した高級なお弁当を食べながら昼食会のあと

マワシに着替えて
参加者全員で集合写真を撮影したあとは

大相撲の相撲部屋などから貸し出された化粧まわし
をつけた姿で我が子を抱き上げて個人撮影をした


"ママさん相撲"の試合で使われるマワシはマジックテープなどを用いて取り付けを簡単にした専用のマワシだが
なぜか前部分はマジックテープもなく二重になっているのかユキは不思議に思い
ときおり まゆみなどと話し合ってはいたが
この前掛けのような化粧まわしを着けるためだったのかと合点がいった。

そして
もっと強くなってこの子を守らなければという
母親としての思いが強まるのを
化粧まわしを着けた姿で我が子を抱き上げながら感じた

そしていよいよこの日のメインイベントの相撲大会に入っていった

参加者は化粧まわしから取り組み用のマワシに締め直し
くじを引き
広いメインホール内に用意された3つの土俵に分かれて取り組みに入っていった

この日の取り組みはまず30人の参加者を2組に分けての総当たり戦形式の予選が行われ
各組の優勝者が総当たりで全体の優勝を争うという形で行われた

ユキとまゆみはちがう組になった
「じゃああたしは向こうだから決勝でね」
「決勝でまたやりたいわね」
と2人はそれぞれの土俵に分かれていった

土俵上では久しぶりの相撲を楽しみつつも
女と女の意地が激しくぶつかり合い
それなりに見応えのある熱戦が繰り広げられていた

小柄なユキは相手の懐に飛び込んで下手を取ったり

時には正面から力と力の勝負を胸を母乳まみれにしながら受けて立ってみたりしながら
なんとかユキとのなんどか重ねた練習の甲斐もあってなんとか全勝で決勝に駒を進めた

普段は1回戦や2回戦で負けることが多かったのだが
やっぱり練習は大事なんだなとユキは感じた

まゆみもどうにか勝ち上がってきて

ここにユキとまゆみの直接対決が決勝で実現した

「あんたにしては偉い調子が良いわね」
「そっちこそ」

そんな軽口をとばしあい
2人はそれぞれの我が子のいる休憩場所へ分かれ
授乳等すませ

決勝の土俵にへ向かった

立ち会い お互いに言葉はなく
無言で睨み合った

ユキとまゆみは誕生日が近く
こどもの出産時期も近く

おなじく小柄な者同士ということもあり
普段はとても仲が良いが
土俵の上では激しく火花を散らし合ってきた

そして今日もまた
2人は審判の合図にあわせて
正面と正面でバチンとぶつかり合った

利き手だけはちがうので

2人の取り組みはいつも
手が喧嘩のように
マワシの主導権を奪い合う

胸と胸を合わせて正面から組み合い

そこからユキはまゆみに秘密で練習してきた
普段とは逆側からの投げがきまり

まゆみを土俵に転がした

これでまゆみとの対戦成績は3勝3敗になった
まゆみに負け越して相撲を産休にはいったのが心残りだったが
「あの新しい技すごいわね」
「あなたに負け越してたのが悔しくてね」

こうして
"こどもの誕生を祝うママさん相撲の大会"
はユキの優勝で幕を閉じた

ユキとまゆみは
帰りはいつものように近くの喫茶店でお茶をしてから家路についた。

この出産して2年以内の女性たちだけの相撲大会は
出産後の競技復帰を促したい日本相撲協会女子相撲推進部と子供を産むという喜びをより感じて貰い
出産増加を促したい政府や自治体との利害が合致して
神奈川県のこの日の大会で第一回を開催したあと
全都道府県で開催されるようになる





その後
化粧まわしでの写真撮影は"ママさん相撲"に興じる母親たちに好評を博し
こういった 出産を祝う等のイベントや
全国大会など大きな大会のセレモニーや記念撮影などで使われるようになり
"ママさん相撲"にも少しずつ根付いていくのだった。

2021年5月8日土曜日

谷川まゆみ 28歳 子1人

ある日の午後の時間
まゆみは所属していた同じ相撲クラブで
同じ時期に妊娠して
出産も1日違いだった朝倉ユキを家に招いて
茶菓子を食べながら談笑していた

共に出産して2ヶ月
久々に会って積もる話や
子育ての話など
いろいろな話に花が咲いた

「また、お相撲やりたいわね」
「あら、わたしフンドシ持ってきてるわよ」
「いいわね久々に2人だけで」

と2人は話の流れで
手馴れた手つきで
座っていたソファとテーブルをどかし

絨毯の上に紐とビニールテープで即席の土俵を作って相撲の準備を始めた

歳も近く
元の職業が
ホームセンターと電機量販店ということもあり
気が合う2人は
妊娠する前から
こうして、2人だけの練習を時折やってきた

これを今から久々にやろうということだ

そして服を脱いで久々にふんどしに着替えた

ユキとお揃いで買った赤いふんどしを締めてみると
やっぱり、出産前より太ったなと感じた
ユキも同じように太ったようだった
そうして締め込み終わると
「おぎゃあ、おぎゃあ」
ちょうど同じタイミングで子供たちが泣き出した
お腹がすいたという授乳の催促だった
まゆみとユキはそれぞれ我が子を抱き上げて授乳した
守るものができたんだし
もっともっと強くならなきゃな

とまゆみは思った

そうして
「はっけよい のこった~」

2人は声を合わせて土俵の中で組み合った


最初は戯れ程度に軽く押し合う程度のつもりだったが

組み合って
胸と胸を合わせて押しあったり
投げを打ち合ううちに
気持ちに火がつき

徐々に本気の勝負のような熱量になって行った

互いに大会ではいつも1回戦か2回戦負けで
たまに勝ち上がっても3回戦止まり

そんな互角な弱小同士ということもあるのだが
互いが互いに密かに負けたくない相手と意識しあっていた

参加した大会では何度か
そんな2人の直接対決もあった
今までの対戦結果は3勝2敗とかなり拮抗したものになっている

そうこうしているうちに
まゆみはユキに土俵の外に押し出された
「お腹出たんじゃない? まゆみ」
「ユキ あんたもよ」

その次の取り組みでは
最初の負けで火がついたまゆみが
ユキを投げ飛ばし

その次の取り組みでは
ユキがまゆみを投げ飛ばし

また次はまゆみがユキを吊り出し

ライバル同士に戻った2人の熱の入った稽古は
時折、オムツ交換や授乳
休憩などを挟みながら
夕方近くまで続いた

気がつけば
2人の身体や土俵を作った絨毯は所々、2人の乳が押しつぶされて出た母乳で白く汚れていたが
ユキも掃除を手伝ってくれてすぐに、片付いて
2人でシャワーを浴びて
熱の入った練習を終えた

そして
来週から復帰しようという話になり
ユキはまゆみの家を後にし
2人のお茶会を終えた。

前田ゆづき 29歳

夕方19時過ぎ ゆづきは関内駅近くのいつもいく店で軽い食事を済ませていつものスポーツジムにむかった。
そして通勤鞄からタオルと若草色のふんどしが入ったジッパーの袋を取り出した。
着ていた者をすべて脱ぎ、パンツを脱いでからお気に入りの若草色のふんどしを身体に纏うときの
開放的な気分になるこの時間が好きだ。

そうして、自分の中を
仕事モードから"相撲"モードへと心と身体を切り替えていくことで
昼間の仕事での様々なストレスを忘れ

この"相撲"とは、主に政府の給付金政策で増えた女性たちの間で広まりつつある
"ママさん相撲"のことだ

"ママさん相撲"と呼ばれるのはやっているのが
おもにやってる人たちが主婦の女性たちだからで
別に既婚でなくてはならないとか、専業主婦にかぎるとかの決まりはない


ゆづきのように
結婚してからも会社から請われて、それに応える形で
政府の給付金を伴った少子化対策政策が始まってからも
会社を辞めずに働き続けている女性もいる。

もともとはこのスポーツジムで普通にマシントレーニングをして
日頃のストレスを解消し、休みの日は結婚して2年になる夫と
ジョギングやスキー、スノーボードなどに出かけるような生活を送っていたが

とあるYOUTUBERがきっかけで
主婦たちの間で美容目的などでの相撲が広まり
ゆづきの通うジムでも相撲のプログラムが設けられた
それはたちまち人気のプログラムになり
月曜日と水曜日と金曜日と
3つの曜日に時間帯が作られた

そして最近では初心者向けのプログラムもまた別枠で作られた

これらのコースでは女子相撲経験のある女性トレーナーの指導監修の元
準備体操から始まり、四股やすり足など基礎的な練習を最初の30分で行い
そこから残り30分は試合形式の練習の時間になる

ゆづきは最初
裸になることなどに抵抗があり
お試し程度に最初の30分の時間だけ
普段のTシャツに短パン姿で混ざるだけだったが

気がつけば後半30分にも徐々に参加するようになり

いまではすっかりこのプログラムの常連になり、
相撲を取るときなどに限っては裸になることの開放感に快感すら感じるようになっていた。

そして本郷あやかや田中あゆみなど
神奈川県の月例の大会などで優勝を争うライバルの存在も
ゆづきを土俵に引きつけて放さない大きな要因となっていた。

昨日はその月例の大会の準決勝であやかに負けた
その悔しさも相まってゆづきの相撲への思いはさらに強い物になった。

2ヶ月前から始まったこの大会で決勝までいけなかったのは初めてで
内心、優勝した先月に続く連覇を狙っていただけに悔しさは一塩だった。
さらに準優勝したのが初参加の田中あゆみという存在も
ゆづきの心を奮い立たせていた。

土俵から離れればLINEやSNSで連絡をとりあい
ゆづきとあやかはたわいもない会話で盛り上がったり
なにかあれば相談に乗り合ったりする仲であるのだが

大会当日などは互いを意識し合う余り
口数が少なくなり

時に激しい言葉を
取り組み前などにぶつけ合ったこともある

そんなライバル同士なのだ
また、昨日、始めて表彰式でかおを合わせたあゆみともLINEの連絡先を交換した。

そんな風な感じで神奈川県内に何人かの相撲仲間ができた。

また同じスポーツジムでも
まだ大会にこそ参加していないが
3歳年下の岩田ユリコが最近参加し始めてしめきめきと力を付けてきて
練習ではたまにゆづきに勝つほどまでに成長してきた。

こういった仲間たちと談笑し合い
また土俵の上で肌と肌をあわせて戦い合う

こんな日々がゆづきの生活をより刺激的なものにしていた。

また後に、ゆづきに第一子ができた際はこのライバルたちにとても助けられることにもなるのだった。

2021年5月2日日曜日

西井さやか 26歳 子供1人

とある日曜日
さやかは大きな体育館の中の土俵の上に居た。
仕切り線に拳をのせて
相撲の立ち会いの姿勢で
対戦相手の女と呼吸を合わせ、
審判の取り組み開始の合図を待っていた

体育館の中は
裸に締め込み姿の女たちの熱気が充満し

いつも一緒に相撲の練習をしている
フミカ、よりこ、あゆみは客席に確保したグループの席から
自分たちの中の最年少のさやか取り組みの様子を固唾をのんで見守る。


今日は"ママさん相撲"の大会の日だ

ママ友同士でそれとなく始めた相撲
まさかこんな大きな大会に参加してしまうほど深入りしてしまうことになるとは
2年前のさやかなら思いもしなかっただろう。

そもそも相撲なんて
裸にふんどし姿でまさかじぶんがやっているなんて

それでも
やっているとなんか気持ちがすっきりする
勝つとなおさら気分がよくて
負けても、次はもっとこうしようとか
なぜか不思議と気持ちは前を向く

悔しくはあるのだが、それもまた楽しい

そんな心持ちで
最初はテレビをみて温泉の土俵で気まぐれではじめた相撲
さいしょは真っ裸で組み合っていたのが

つかむものが欲しいからと
腰にタオルを巻くようになり

たまに誰かの家や公民館で練習するようになると
流石に陰部を露出したままというのはと
youtubeに倣うって思い思いに好きな色のふんどしをつけるようになり

最初は1番乗り気じゃなかったさやかが提案してグループ全員で大会に参加する運びになり

ついこないだ、スポーツ用品店で
大会参加に必要なマワシをグループ全員で買ってきて
一回だけ練習で付け方から付けてみての取り組み等まで練習した真新しい白いまわしが
さやかの腰に巻かれている

そうして迎えた
初めての見ず知らずの女との大きな大会での1番は

どうにかこうにか
激しい攻防の末

さやかに勝ち名乗りが上がった。

そうしてさやかは
順調に勝ち上がり
同じグループのあゆみとの対戦になった

年が最も近く、専業主婦になる前は同業他社の商社に勤めていた者同士とあって
ひそかにさやかはあゆみを意識していた

大浴場などでの普段の練習の取り組みから
あゆみとの対戦に特にさやかは熱を入れてきた

また普段、最も子育てや家事などの話をしたりする間柄のさやかとあゆみだが

トーナメント表を勝ち上がるにつれ

互いに意識しだしたのか
今日はふだんより互いの口数が少なくなりながら
遂に対戦の時を迎えた
「さやか、ぶっ倒してやる」
「あゆみさん、負けませんよ」

そう会話を交わし

さやかとあゆみはこの大会の準々決勝の土俵に右と左に分かれてあがっていった

そうして
仕切り線に手を突いてにらみ合った2人は
審判の合図で激しく身体をぶつけ合い

身体を押し付け合いながら
右に左にと圧力を掛け合って駆け引きをし

大きさに自信をもつ互いの胸と胸を密勅させながら喧嘩四つでマワシの主導権を奪い合い

長い取り組みすえ

あゆみがさやかを土俵にたたきつけるように上手投げを決めて
勝ち名乗りを受けた

さやかはライバルに負けた悔しさを少し目を腫らしつつも
1つ上の先輩のあゆみに手を差し伸べてもらい、一緒に仲間の待つ席に引き上げた
「あゆみさん、次は負けませんよ」
「あんたは私が神奈川で1番になるのを後ろで見ときな」

そんな会話をかわしつつ
2人は普段の関係に帰っていった

つぎこそはあゆみに勝ちたい
そんな思いが
さらにさやかを"ママさん相撲"のなかに深く引き入れていくのであった。

2021年4月29日木曜日

山田フミカ 35歳 子供2人

ある日

ふと youtubeでいろいろ見てみると

佐々木が浜のママさん相撲クラブの動画が目についた

母親同士が素っ裸でよくやるわとも思いながら

大会参加記の動画や練習風景の動画をみていって


ちょっとフミカもやってみたいな~とも思い始めていた


また下の子にせがまれて
あの温泉に行った

すると
今日は

こないだの母親たち同士が相撲を取っていた

聴いてみると
こないだテレビでやっていた
"ママさん相撲"の特集をたまたま全員見てて
ちょっと自分たちもやってみたくなったのだとか

フミカも似たような衝動を抱いていたので
誘われるままに
母親たちの相撲の輪に加わってみた。

最初は気恥ずかしさもあって
遠慮気味に手で押し合う程度だった取り組み内容も
だんだんと 白熱して激しく体と体を押し付け合い

投げ技なども時折飛び出す激しいものになり

また、見守る子供たちからも
「ママーーがんばってーー」
「お母さん負けるなーーー」
とか応援されるものだから
どんどんどんどん熱を帯びていく

勝って喜び負けて悔しがり

 それにしても
大人になってから女同士、素っ裸で
激しく体を押し付けあって
まがいなりにも相撲をとることになるなんて

人生は何がどう転ぶかわからないと
フミカはおもった

それから今日集まった
4組の親子は

一緒に体を洗い
入浴を楽しんで

連絡先を交換し合って
温泉を後にした

山田フミカ

西井さやか

2021年4月25日日曜日

石黒富子 27歳 子供1人

富子は海辺のホテルで朝を迎えた。
かねてより交流のある佐々木が浜女子相撲クラブの練習会の2日目の朝

昨日出会ったライバルと言えそうな1人の女性の存在が

最初は相撲クラブ同士の付き合い程度のつもりで参加した練習会だったが

朝起きたときの心持ちを張りのある物にしてくれた。

同じクラブのフミカを誘いホテルの朝食会場に向かった

せっかくお誘いだったので

本当は自分たちのクラブからもっと大人数で来たかったが

構成メンバーは主婦ということもあり
富子のクラブからは富子とフミカの2人だけでの参加となった。


政府の給付金を伴った少子化抑制政策で専業主婦

少子化抑制政策で専業主婦になる女性たちの間では水泳や陶芸、スポーツバイク等さまざまなものが流行した。
そのなかの一つに、美容効果と必要な物は「まわし」か「ふんどし」1枚という手軽さから
いわゆる「ママさん相撲」と呼ばれるスポーツもそんな主婦たちの流行り物の中に含まれていた。
この時代の女性たちはほかの時代に比べて裸になることへの抵抗は薄れていることもあいまって。
マワシ1枚で女性同士が裸で相撲を取り合うことも意外にも受け入れられていった。
日頃の有り余ったエネルギーや、主婦業のストレスを発散するはけ口としても需要があった。

富子もそんな世間の流れの中でそれまでの工場の仕事を辞め
夫のサーフショップを手伝いながら
家事子育ての傍らサーフィンを楽しむといった日常を過ごしていた

そんな折
ママ友から

誘われる形で相撲を始めた

はじめは素っ裸にふんどしなんてと
恥ずかしく思っていたが

浜辺や公園や誰かの家での馴染み同士の練習や
地域の大会などに参加し

たまに上位に入って賞や景品を貰ったりしていくうちに
"ママさん相撲"の魅力にとりつかれていった

家で使っている食洗機も
家電メーカーがスポンサーの大会の優勝で貰った物だ


 富子たちがビュッフェ形式の食堂で朝食を選んでいると1人の肌の白い女性から声をかけられた

同じ神奈川に住む 岩田ノリコ

昨日、出会った相撲への気持ちをさらに燃え上がらせてくれそうな存在だ。


歳は富子と1つ違いで
体型も身長もそっくりで

昨日のノリコとの申し合い等での取り組み結果は
やや富子に分があったもののほぼ互角

力ならノリコ
技なら富子

そう富子は分析していた

富子はノリコと朝食をともにした

そして

今日の自由練習では
一緒に練習する約束をした。


「今日はあったかいから海につかりながら13番稽古なんてどうですか」

ノリコからの提案を富子はは快諾した。

部屋に戻ると
富子は練習着とも言うべき赤いふんどしを締め込み
自分の裸の身体を見て

少したくましくなったなと感心してから

Tしゃつと短パンを上から身にまとった

ママさん相撲では
かさばらないふんどしが主に練習着として使用され
マワシは試合用になることが一般的だT

最終日の今日は

練習会場の砂浜では
あちこちで

即席のペアができて

取り組みやすり足等の練習があちこちで行われていた。

各々の女たちが締め込んだ 青や白や緑や紫など色とりどりのふんどしの色が
晴れ渡った砂浜に鮮やかだった


富子も砂浜の膝下まで水につかる水深の場所でノリコと向き合った
160センチの締まったモデルのような体に透き通るような素肌に
とんがって突き出たまるい胸
緑のふんどし



これからの相撲人生で壁になりそうな存在

負けたくない
そんな気持ちで13番稽古の最初の立ち合いに入った

そうして

富子とノリコは互いの負けたくない意地と意地をぶつかり合わせながら
何番も組み合った

水の中で好敵手の女の身体の力を感じ

ときには
海に投げ落とされ

ときには富子がのりこを海に投げ込み

そんな取り組みが何番も続けるなかで
二人の稽古は熱を帯び

最初13番と約束していた取り組みは

互いの優れた体力も相まって20番以上に及んだ

気がつけば

胸下までつかるぐらいに深い場所で
ノリコと富子は
組み合っていた

ここで富子はノリコの足をかけて
水に沈め
「ちょっと休憩しましょうか」
「そうね、あそこのコンビニでコーヒーでも飲みましょ」

そして

そのまま
今日の練習を終えた。

2人ともかなり疲れて
コンビニで休むころには

体に乳酸がたまって、もう動けないぐらいに疲れ切っていたのだ

ノリコと富子は
どこかの大会での再会と再戦を約束し
ノリコは佐々木が浜の代表に帰りの挨拶をし
富子はフミカの練習終わりをまって別れた。


ここからの相撲生活楽しくなりそうだと富子は思った。

2021年4月17日土曜日

岩田ユリコ 26歳

政府の給付金を伴った少子化抑制政策で専業主婦になったユリコは
とある企画に応募した。

最近、よく企画される"女性限定の相撲の練習会"だった。



少子化抑制政策で専業主婦になる女性たちの間では水泳や陶芸、スポーツバイク等さまざまなものが流行した。
そのなかの一つに、美容効果と必要な物は「まわし」か「ふんどし」1枚という手軽さから
いわゆる「ママさん相撲」と呼ばれるスポーツもそんな主婦たちの流行り物の中に含まれていた。
この時代の女性たちはほかの時代に比べて裸になることへの抵抗は薄れていることもあいまって。
マワシ1枚で女性同士が裸で相撲を取り合うことも意外にも受け入れられていった。
日頃の有り余ったエネルギーや、主婦業のストレスを発散するはけ口としても需要があった。

ユリコのように結婚はしつつも仕事や日常に追われ、
近所や周辺の主婦同士の交流がほとんどなく
「相撲」を始めて見たはいいが
その練習相手も身近におらず、
たまに参加する大会だけが取り組みの練習の機会で
家ではもっぱら、一人でできる体操や四股踏み等のトレーニングしかできないという
環境の人も多かった。

また今回の合宿は主な会場が砂浜なのも、海辺育ちのユリコには大きかった。

参加条件に"泳げること"
とあったのだ

合宿の日程の中に遠泳も組み込まれていた。

ツアー会社ではなく
佐々木の浜女子相撲クラブという
クラブ主催形式のオープン参加型の1泊2日の合宿

自身もスポーツクライミングの趣味を持ち
理解のある夫は快く その参加の旨を承諾してくれた。

当日、ユリコはスポーツバッグに荷物をまとめ
朝5時半に家を出た
それにしても相撲は荷物が少ない
学生時代にやっていた剣道に比べると荷物が軽い。

朝8時頃
宿舎の高級なリゾートホテルに着き、
荷物を置き、ふんどしを締め込み、その上からTシャツと短パンをまとい
シャワーサンダルを履いてホテルから集合場所の砂浜に向かった。


砂浜に着くと
まずはみんなで輪になって
クラブの代表の女性の話を聞き
参加者全員の自己紹介と流れていった
今回の参加者は総勢10人あまりで

関東だけじゃなく北海道や四国など
いろんなとこから着てる人も居るようだった


ぼやーっと
見回しながら話を聞いてると

一人の女性と目が合った。
その視線は
色白のユリコとちがって色黒ながら
身長や体型がゆりことすごく似ている女性だった。

ユリコもその色黒の女性が気になり始めた。


その後 Tシャツをや短パンを脱ぎ
準備体操をしたあと

コーンを3つ置いての簡単なアジリティトレーニングや
1:1でのビーチフラッグのような運動をして

遠泳に入った
ビーチフラッグで
たまたま あの色黒の女性と対戦になった。
すんでの差でユリコが勝った。

やっぱり Tシャツを脱いだ体格もユリコとそっくりだった。

遠泳中も気になった

その女性がユリコの1つ前を泳いでゴールした。

ユリコは心にメラメラした物を感じた。

そして
宿舎に昼食を摂りに帰るときに話しかけてみた
「たしか、神奈川の湘南でしたよね? 私も神奈川で横浜に住んでるのでよろしくお願いします」

「あ岩田さんね、石黒です。神奈川だと同じ大会で当たれそうねよろしく」

「楽しみですね石黒さん。 負けませんよ」


食後は
すり足や四股踏みから始まって
二つの土俵をロープで仕切っての申し合いに入っていった

女たちが裸にふんどし1枚の姿で浜辺の土俵を取り囲み
そして
土俵の中では2人の女と女が
相撲を取り合い、組み合い

勝負がつけば
勝った方によってたかって取り組みを申し込む

手を上げて申し込んだユリコが呼ばれた

そして 正面から組み合い
3番取り組んで疲労の見える相手をなんとか
土俵の外に押し出し

申し込んできた富子を相手に指名し

2番目の取り組みに望んだ
なんとなく負けたくない相手

そう意識し合う二人の取り組みは
激しく身にまとったふんどしをつかみ合い
激しくその肢体と肢体をぶつかり合わせながら

押し合いながら
仕掛け時を探り合っていたが

すんでの隙を突いた富子が
ユリコを砂浜に押し倒す形で

最初の対決に軍配がついた

ここから この二人は幾度も大会などで対戦していくことになる

負けた悔しさもあったが

ユリコはこの活気ある空気を求めて
この練習会に参加したのだと心の底から感じた。

そうした
活気の中で
練習会の1日目が終わった。

2021年3月28日日曜日

小淵沢よりこ 34歳

よりこは以前より余りある時間と体力をもて余していた。
少子高齢化に歯止めをかけたい政府の方針により
子持ちの女性には1ヶ月の総労働時間が30時間以下という条件で
育児手当として子供一人あたり月20万円が支給されることになった。

小学校2年生の子供が居るよりこは、これが始まって
それまでの仕事を辞めた。

そういった感じの専業主婦が多く居た

この法制度が始まって最初の頃は余った時間を長年の育児と仕事の疲れを癒やすのに使っていたが
徐々に体力も時間も持て余しながら漫然と家でくつろぐだけの時間が増えていった。

そんなある日
テレビを見ていると、
裸にマワシだけの姿で相撲を取る主婦たちの映像が映し出された。
全国大会の様子らしい

動画配信サイトで公開された相撲や格闘技が美容法として効果があるという動画が反響を呼び
仲間うちで相撲を体操として始めてみる主婦や
その様子を遠征旅行の様子なども交えて自ら動画配信サイトに投稿する主婦や
愛好する主婦同士がSNSで交流が広まるなどして
専業主たちの間で相撲熱が高まりをみせているのだという

最初は 「はだかでやるのか・・・・・」
とも思ったが
結婚して子供ができて多忙な日々をおくるなかで
人前などで裸になることへの抵抗が以前より薄らいでいる気もしていた
少し興味がわいたので
よりこも動画配信サイトでいろいろ見てみることにした

まわしの買い方、付け方から相撲でのテクニックや大会へ参加したときの様子をまとめた物や、
仲間内などでの活動の様子や
さまざまな動画が投稿されていた

よりこは
なんの参加する当てもなかったが
主流の洗濯しやすい素材で
スピードベルトタイプのマワシと
初心者向けのガイドブックのような雑誌を
通販サイトで注文した。