2013年10月2日水曜日

メオトゼンザイ

 ゆきことあつしは、一見したところサラリーマンのあつしとそれを支える専業主婦の妻のゆきこというごくごく普通の夫婦にみえる
 夕方や早朝には二人でランニングをする姿をよく見かける
 そして月に二度ほど夫婦は小学生の子供を親にあずけ、決まった場所に二人、車でかける
 あつしの運転する車は田舎道を分け入り
 田舎の古びた小さな寺に止まった
 
駐車場には他にも何台か車が止まっていた
入り口には相撲の番付表のような名札立てがあり
そこでゆきこは
『小結 川田』とかかれた表札を裏返し、大きな広間にあつしと入っていった
 ここは闘妻寺
夫婦の絆を取り戻したいと願う夫婦が集まり、定期的に夫婦会を行う
夫婦会というのが今日である
何をするかというと、女を闘牛の牛に見立てて
女たち同士が組み合って力比べを行い
男たち
まわりの夫婦もそうしているように
あつしに着てきた衣服を預け
身の回りの世話をやかせながら服をぬいでいき
赤い色の男性用の短パン型のスパッツに上半身は豊満な胸を露わにした姿となった

川田夫妻のまわりにも夫に手伝われて、色とりどりの男プロレスのようなパンツ姿になった女たちが何人か集まっていた

女たちはひとつのツボのまわりに集まり、手を入れ、色の付いた石を一人一個ずつ取り出した
蝋燭の明かりに照らし出された黒板には各色毎の部屋の名前が記されていた
それぞれの夫妻は女たちがひいた石の部屋に向かった

ゆきこは鶴の間西という部屋を引き当てあつしと鶴の間の西側の襖に向かった
所定の時間になり真ん中の部屋から時を告げる鐘がなり
ゆきこともう一つの襖に入っていた女は部屋の真ん中に入り
向き合って座った
そしてゆきこは慣れた手つきで自分の名前の書いた紙を出し
向こうの若い女は慣れない手つきでゆきこの所作を真似るように紙をだし
紙を交換した

ゆきこは女の白く美しい肌と
スラッとした若い体つきをみて
「若いのね、海原さん年いくつなの?」
と声をかけた
「28です
初めてなんでお手柔らかによろしくお願いします」
対戦相手のみゆは緊張気味に返した
「私は横綱をめざしているからそうもいかない部分もあるけどよろしくね
そういえばお子さんは何歳なの」
「まだいないんです
三年間努力してもできなくて
夫と相談してここに来たんです」
「そうなの今夜のお二人の健闘に期待するわ」
そうゆきこが答えると
鐘がなった
みゆとゆきこは正座して向かい合い
手と手を絡み合わせるように出し合い主導権を伺い
やがて、みゆより体重の重いゆみこがみゆにのしかかるように倒れ込み
ゆみこがみゆの上に乗った
二人の女は身体と身体を密着させ上になり下になり、転げ回り 下になってたみゆがゆきこを押し返し 二人の女はあらわになった肢体を密着させ 腕4つで押し合った 「やるじゃない でも」 ゆきこは勢いよく みゆの身体を床にたたきつけ ミユの身体を一回転させ勝利を収めた ユキコは2枚の紙を持ち中央の部屋に向かった 神を中央の間の掛に渡し ユキコの今日の勝利は確定し ゆきことあつしは帰りの車に乗った