2023年8月15日火曜日

久米さゆり 25歳

さゆりは

ママ友仲間で

ママさん相撲クラブの仲間でもある
岩田かすみの家に「出稽古」に訪れた

かすみの家では
どうにか相撲が取れるかくらいの広さのリビングで

さゆりも手伝って
テーブルなどの家具を隅にどかし

それから

服を脱ぎ、真っ裸になると
練習用のオレンジのふんどしを締め混んだ

クラブの練習や大会では廻しをつけるが
自分たちの家などで練習する時は

廻しでぶつかって家具などを壊してしまわないようにということと
生地が薄くて
洗濯してもすぐ乾くということで

ふんどしを着用することが一般的だ

かすみも水色のふんどし姿になった 

まずは2人で柔軟などの準備運動を行い
それから

ふたりは部屋の真ん中の大体の位置で蹲踞して向き合い

「それじゃ、遠慮なく行かせてもらうわね」
「ええ 、どこからでもかかっていらっしゃい」
そう軽口をたたきあうと

両手を着いて目で合図し合って

互いの元へ突進し合い

1度身体と身体をぶつけ会うと


さゆりは頬へ
かすみは喉輪に張り手を打ち込み

猛烈な張り手の撃ち合いになった

同じ日に今のママさん相撲クラブに入会して
相撲を始めた
さゆりとかすみ

土俵をおりれば
とても仲が良いが

相撲という1対1で
戦い競い合う競技に興じ

クラブの練習の申し合いだけでなく

同じクラブ同士でも個人戦で
トーナメントを勝ち上がっていくと

さゆりはかすみと対戦することがあるなかで
互いを意識し合うようになり

土俵で出会うと

お互いに
どうしても負けたくない相手と意識し合う間柄になった

個人戦や練習の内容によって
どちらかが団体戦メンバーに選ばれたり
どちらかが外れるということも出てきたので
その思いはひとしおだ

そんな思いをぶつけ合うようにして

張り手を防ぎ合ううちに
組み合う形になった

身体を上下左右に揺さぶりあいながら
組み合っていくうちに

僅かなすきをついてかすみがさゆりを転がし

この取り組みはかすみが勝った


何番も取り組みを行った




そして

あずさを保育園に迎えに行く時間が近づいてきたので

2人は部屋を元に戻し

麦茶を1杯ずつ飲んでから
さゆりはかすみの家を出た

そして
娘を車に乗せ
さゆりは

我が家に帰った

こういう
自主練習は

かすみと
何回かそれぞれの家でやっているが
 今日も

かすみに勝ち越すことができなかった
かすみは
このところ
初めて個人戦上位にくい込んで
徳島県代表の藍色のさがりつきの廻しを着けるようになるなど

最近
かすみに水をあけられている感じがする

家の物干しにワイシャツや下着やくつ下
と並んで
縦と横
2つにバラした
廻しが干されている光景は

ママさん相撲に関わる主婦の家の
物干し場の馴染みの光景になった

ママさん相撲の廻しは
当初期は
縦横一体型のものが主流だったが

参加する主婦たちの超えや
販売するスポーツメーカーの技術革新で
開発研究がすすみ

分厚さの割に風通しがよく
乾燥しやすい素材が
開発され

持ち運びや選択の容易さで

縦横分割タイプの廻しが
主流になった

つける時は縦からつけるか
横からつけるか
様々に付け方の意見が別れる


こうすることにより

よりコンパクトな荷物で
移動できるようになった

さゆりが
子供とお風呂に入っていると

「ママ、今日はお相撲だったの」
娘のあずさがさゆりの
相撲で赤くなった胸や頬やおでこなどを
みて聞いてくるのが
お風呂でのよくある会話になった
「そうよ、お相撲してきたのよ」
と、ゆかりは
子供でもわかるようになったのだなと
感心しながら答え
「ねえ 今日はかずきくんのママには勝てたの?」
などと
子供も聞いてくるようになった

それにしても
始めてみるまでは
張り手の打ち合いがこんなに
痛くて後が残るものとは
さゆりも思っても見なかった




土俵も
土のものから

安全性や
土が着かないということで

専用のウレタンマットが主流になった

最初は美容のためのエクササイズとして
始まったママさん相撲も

政府や自治体が
その美容効果から来る
夫婦間の営みの増加と
それに伴う出生率の増加に目をつけ

ママさん相撲に関わるようになった専業主婦への給付金の上乗せや
公式の大会での優勝賞金や
各取組毎の懸賞金などで


取り組みの内容は全面的に激しくなり

また
張り手の解禁などが

それに拍車をかけた


多くの取り組みでは
対戦相手のバランスを崩すのに用いられるが

ごく稀に
まるで

殴り合うかのように

激しく張り合い

片方が失神して崩れ落ちて決着する
取り組みも出てきた


翌日
かすみとの差を少しでも縮めたいさゆりは
県内の大きなスーパー銭湯に車を走らせた


洗い場で身体を軽く洗い
お風呂セットをカゴに入れて携えると
プレイスペースのウレタンの土俵に向かった

そこでは既に何人かの女性たちが
集まって
相撲に興じていた

周りのベンチに
お風呂せっとを置いて

まずは土俵のまわりで
摺り足や四股やストレッチなどの準備運動を行い

前掛けエプロンのようになった
大浴場の土俵専用のタオル素材のマワシを
締めこんだ

これは

対戦相手募集のサインを意味する

そうしていると

取り組みを終えて
勝った女性が
右手を上げてくれた

そして
さゆりは
右手を上げた

これで
対戦しましょうという約束が成立し

さゆりは
土俵に入った



さゆりは
招いてくれた
若い女性と

土俵中央をはさんで向き合った

廻しやふんどしにはない
股の間の開放感が

ワクワクを呼び覚ましてくれる
 
大浴場では
さゆりは
取り口を組四つに変える

大浴場の土俵では
競技としてママさん相撲をやっている人もいれば


完全なエクササイズやレジャー目的で
ママさん相撲に興じている人もいる

なので
張り手は控えめにするのが
エチケットになっている

もっとも
ママさん相撲クラブ参加者同士とお互い分かった上での取り組みでは

互いに申し合わせた上で張り手などを解禁にすることはあるが

ここでは基本的に
初心に帰って
胸と胸を合わせて組み合い
力比べや揺さぶりあいでの駆け引きに
終始する

時折
レスリングの様な潜り込む技を仕掛けられることもある

肌を合わせて組み合った時に感じる

裸の女同士の肌と肌が合わさって

押し合う感じ
堪らないと

さゆりは感じ
ママさん相撲をはじめたころの気持ちをおもいだすのであった