2015年8月23日日曜日

俵公園でピクニックを

平日の晴れたある日
まきは主婦仲間のすみれと松林に囲まれた海辺の公園で昼食を取っていた
近くの工業地帯に勤める夫と小学生の息子をそれぞれ送り出し
家事を一段落させてからの気晴らしである

この松に囲まれた砂浜は
観光客を囲えるほどの広さもなく
また公園としては整備されておらず
また地図にも載っていない
よって世間一般には知られておらず
地元の主婦たちが「俵公園」と呼んで
秘密の社交場のようになっていた
この場所は高い松に囲まれていて
夏の昼間でもそれほど暑くならない
だから冷房代を節約できることも主婦たちが社交場にする理由の1つだ

「まきさん ここは風が涼しくていいですね」
「これだけ夏でも快適なんですものヨソの人にはそうそう明け渡したくはないものだわねすみれさん
あれ持ってきた?」
「ええ もちろんよ」
とすみれはおもむろにスカートをめくりあげた

「まあ すみれさんたら」
すみれの腰周りには花柄のマワシがキリリと締めこまれていた
「まきさんから教えて貰ってから これもここに来る楽しみになったわ」
「お腹もいっぱいになったことだし 早速俵にいきましょうかすみれさん 」
まきも服を脱ぎ置いて
下に着込んだ手製のマワシ姿になるとすみれを連れ立って土俵のある砂浜に歩いて行った
浜ではまきやすみれたちと同じようにマワシ1枚の姿になり
砂浜では海で泳いだり
ビーチバレーに興じたり
相撲を取ったり
思い思いの遊びに興じていた

ビーチバレーや水泳などは主に仲間うちで行うかたちになるが
相撲は土俵が限られ
常に10人は一つの土俵に集まるので
その日集まった主婦たちの間で
勝ったものが土俵に残り
その人に挑んでいく形の勝ち抜き戦形式の形で取るのが慣例となっていた

まきとすみれは列の最後尾に並び
他の女達の相撲を見守った

「すみれさん 先に並んでくれていいわよ」
「あら 知りませんよ私に負けても」
「それはこっちのセリフ」

こうして主婦たちが運動と交流の場にした午後のひとときが過ぎ

夕方になる頃には
女子中高生がマワシをつけて姿を表すことがある

彼女たちにとっては
ここは決闘の場だ
生理的に反りが合わない
同じ男の人を好いた恋敵など

憎い相手と待ち合わせてことに臨むのだ

2015年8月3日月曜日

就活とCF

 わたしはA大学に通う立花ひなえです
いまG商事という会社の最終選考です
なのに通された部屋には面接官の人はいません


ただ私ともう一人いままで一緒にこの会社の選考を受けてきた
D大学の佐野みずほさんも同じ部屋にいます
そして天井には四方にカメラが吊るされてあります


なんかこういうのある予感はしていました
今まで
2次選考で
お相撲の団体戦をやらされ
(チームの勝ち負け関係なく取り組みや行動の内容見て次の選考に案内)
マワシのつけ方や基本的な所作を習った後は
5人ずつ3チームに分かれて
練習したり 誰がどの順番で出るか決めたり
よくあるグループ選考をお相撲にした感じでした


女性しかいない中とはいえ
人前でマワシだけつけてはだかになるの恥ずかしかったな


でも1日拘束したということで一人一人に手当として1万円もらったの熱かったな


みずほさんとは同じチームだったけど
練習中何度かお相撲で闘ってみたりしたけど
ガッツがすごかったな
あと積極的にチームをまとめてたりして
リーダーシップとかにかなり嫉妬してました


そんなみずほさんと
最終選考の部屋で二人
部屋にはお風呂でよくあるようなふくをいれる籠が二つとその間に大きなボードが一つ


ボードには
『今回は弊社G商事の最終選考にお越しいただきありがとうございました
早速なのですが
居合わせたお二人でサッカーと同じ45分間戦ってください
服装 ルール 開始のタイミング等はお二人の話し合いで決めてください
開始の際はボード右下のボタンを押してください
なお 少々の危険が伴うため
棄権される場合は部屋を出て人事部の社員に申し出てください』
と書いてあった
これを読んだ2人の間に約50秒ほどの沈黙が走り
積極性が売りのみずほが口を開いた
「ここの会社 こういう格闘技させて人を見るのが好きですね」
「そうですね 変な選考が多くて楽しいです(苦笑)」
「お相撲の時は同じチームであまり本気で対戦できませんでしたが
ひなえさんの大胆で勝負強い取り組み すごく羨ましく思ってました
勝負勘を心得ておられるようで」
「わたしもみずほさんの積極的で主体性に富んだ行動と取り組みを
感心しながら見てました」
「なら 答えはほぼ出たと思いますが ほかの選考に影響が出たりする恐れもあるので
一度訪ねさせてもらいます
やりますか?ひなえさん」
いつもの選考でしてるように積極的な口調ではなしかけてくるみずほ
その積極さが
ひなえには少し鼻についていた
「やりましょうみずほさん みずほさんがお相撲とるのみて
わたしもみずほさんと戦ってみたくなってたんです」
「なら 決まりですね どんな格好でやりますか?」
「スーツは脱いで下着姿がいいと思います」
「下着だと破れたりしたら困りませんか」
「そうですね みずほさんの力強そうだし
パンツ破れた姿で買えるの恥ずかしいですね」
「じゃあ 裸で決まりですね」
「そうですね 裸にはこないだのお相撲でなれました」
(本当はまだ恥ずかしいが みずほの積極性に引けをとらないために見栄をきった)
そんなこんなで来ていたスーツを脱ぎ
カメラ越しの人事の目を気にしていつもより丁寧に畳み
恥じらいながらもブラジャーやパンツを脱ぎ
丁寧にたたんで籠に納め
みずほと一緒に手を重ね合わせてスタートボタンをおして
みずほと膝立ちで向かい合った


じぶんとほぼ同じ体格でじぶんより少し立派な胸をもつみずほのからだをみて
ひなえの対抗心はさらに燃え上がった
その刹那 みずほはいつもの積極さでひなえに組みついてきた


なれない取っ組み合い
45分間のうち
最初の数分はたどたどしい動きで時間を稼げると踏んだひなえのもくろみは外れた
みずほを受け止める形で
ひなえとみずほの闘いは激しい力比べから始まった