2022年7月26日火曜日

山形あきこ 36歳 こども2人

あきこはコールセンターに勤務していた。
そのときの仕事のストレスで太りはじめたのをきっかけに
ダイエットや美容に関するYOUTUBEを投稿していた。
それから、やがて知り合いの紹介で知り合った男性と結婚して
一人目の子供が生まれてしばらくしたところで

国の子持ち女性に対する
給付金政策が始まり
それまでのコールセンターの収入とほぼ同額の収入が貰えることになり
コールセンターの仕事を辞めた。

この給付制度は
フルタイムの仕事に対しての条件付きの支給制度であり
YouTuberのような時間の縛りのない仕事は
支給対象からはずれる条件にないことがわかり
YouTubeへの投稿は続けた

なんとか
収益化の条件の登録者数と再生時間数は
突破した
でも、なにか
盛り上がりが足りない

そんなとき
かつてあきこが所属した大学のゼミの教授の姫野ユキが
相撲やレスリングなどの格闘技を介した肌のふれあいが、女性のホルモンを刺激し
ダイエットや美容に絶大な効果があるのではないかとの仮説の論文を学会に出したいので
協力して欲しいという依頼をされた

また、なるべく何も着ない裸に近い格好での動画をつくって欲しいということも頼まれた。

格闘技の動画となると対戦相手が必要だ
その当時、30代前半のあきこと50代半ばの姫野教授がやるにしても
年齢が離れすぎていて、身体的にもいろいろとかけ離れていて
よい検証結果が得られそうにない。

どうせなら、戦う上で負けたくない気持ちが燃え上がる相手が良いとあきこは思った。

そして、あきこと年も近く、同じ主婦で、あきこと似通ったジャンルのエクササイズ動画を投稿している
YOUTUBERの中原ひろえに声をかけてみることにした。

全裸での動画撮影と言うことで
最初は渋られたが、裸でやることの科学的な意義を丁寧に姫野教授とともに説明し

ひろえの動画には2人でやる体操の相手役として出演することで話の折り合いがつき
動画撮影が始まった。

まず、撮影前に血液検査を行ない
なにかしらの格闘技を行ない
そのあと
また、血液検査をして
そのあと検査の数値内容を元に姫野教授が経過説明や解説を行なう
という内容で

これを撮り終えてから
ひろえのエクササイズ動画にあきこが出演して
振り返りトークも交えて撮影するということを
週一回ずつ行なっていくという
流れで撮影は行なわれた。

毎週、姫野教授が用意した
大学の一室に集り
血液等の検査の後
全裸レスリングや全裸相撲など
を行い
そしてまた検査を行い

ひろえの動画で
身体をケアする目的のエクササイズを行ない

後日、姫野教授の解説動画も添えて編集して投稿するというYOUTUBERとしての一週間を過ごした。

このシリーズ
一回目は全裸相撲

いつものように
「三十路過ぎてもどんどんキレイになっちゃうぞ~  あきこLABO」
とあきこの動画のいつもの前フリで始まった

そして
あきことひろよが全裸姿で登場し
「今週からしばらくは
ひろよエクササイズのひろよさんとコラボで対決企画をやっていきたいと思います。」
パチパチ

この頃のYouTubeは
女性の裸に関する規制が緩和され
美容目的の動画なら
女性の裸姿は規制されなくなった

「今週は全裸でお相撲します」
「あきこさん負けませんよ 」
「わたしも前々からひろよさんとやってみたかったです 
ひろよさん、ぶっ倒します」

威勢よくノリよく冒頭が始まり
姫野教授の解説が流れる

そして
2人は
お笑い系のYouTubeの対決企画のようなノリで
2人は相撲を取り始めた
最初はぎこちなく組み合い

徐々にどっちかが勝ったとか
負けたとかして行くうちに

燻っていた互いへのライバル心に火がつき

徐々に激しく
組みつきあい

互いに
相撲好きとあって
今までテレビの大相撲で見てきた技を
いろいろ試すように出し合ったり

して
負けた方は
その技で負けた時の変な体勢になったりするので内心、腹を立て

また、互いに組み合いながら
相手の体つきの美しさ
胸の豊満さ
クビレラインの美しさや
お尻のこしつきの綺麗さなどに
嫉妬しあい

時間内に何番も激しい取り組みを行い

撮影を終え

表面上は
爽やかに

「楽しかったですね」
「気持ちよかったね 」
本編を終え
後日、前後の検査の結果を踏まえて送られてきた
姫野教授の解析動画を最後に組入れて
あきこの動画は終わり

ひろよの動画では
ひろよが考案してきたり
大学内の教授がさらに助言、監修してきたエクササイズを行って
表面上、朗らかに明るく
振り返りトークをしながら
2人でリカバリー系エクササイズを行い
という内容の撮影を行った。

それから
数日後

脱衣所の洗面台の鏡に
ひろよから
つけられた爪痕が
背中の腰の辺りなどにあるのを
みつけ

あの女·····
ひろよに対する嫉妬心も相まった怒りが立ち込めた

そして
2回目の全裸レスリングの撮影

あきこもひろよも
前回の撮影で互いに
腕や背中に残った
爪などの傷について
文句を言い合い
少し険悪なムードで撮影に入った


しかし撮影は
互いのプロ意識もあって前回、同様
陽気な雰囲気で始まった。 

しかし
対決は
互いへの憎悪や嫉妬やライバル心から
冒頭から激しく組付き合い
押し合い
組み合い
転がし合い

冒頭から
鬼気迫る激しい内容になった

あきことひろよは
身体をぶつけ合うように激しく組み付き合い

どちらかが地面に倒れると
すかさずのしかかり
のしかかられた方も組み止めつつ上を奪い返し

あきことひろよの
YouTuberとしての
女としての
同じ子を持つ母としての
意地がぶつかり合う

激しい展開で
時間内に決着がつかず
撮影を終えた

それから何日か後の
風呂場で
やっぱり
前の相撲より
傷が多いな

とあきこは思った

そして
全裸相撲の回のコメント欄に
相撲は廻し絞めないと
などのコメントが寄せられていた


そして
やっぱり
レスリングより相撲のほうが
短い時間でやれたりするなどの理由で
視聴者からのウケはよかった

そして次の撮影では
大学内の相撲部の廻しを借りてきて
締めてみて相撲を取ったり

やっぱり
締め方が面倒なので
褌などしめて見て相撲を取ってみたり

腰にタオルやハチマキのようなものを巻いてみて
相撲を取ってみたり

主婦向けのエクササイズとして
相撲を広めるための検証に主眼を置いた
撮影になった

そして
その中の
企画の1部として
大学内の大浴場に
ウレタンの土俵を置いて

相撲を取ってみることもやってみた

この動画と
姫野教授の
格闘技の運動による美容効果を実証した
論文は
大きな反響を呼び

動画のコメント欄には

自分たちも主婦仲間と
相撲を取り始めたとか

相撲を始めたくなった

といった内容が多く寄せられ
あきことひろよも
それぞれに
YouTubeで
相撲の企画を頻繁に行うようになり
あきことひろよの主婦たちの相撲の団体対抗戦は恒例イベントとなり

こういったムーブメントが
のちに
給付金がもらえるからと仕事を辞めて家庭に入った主婦たちの間で

「ママさん相撲」
が盛んになる流れの始まりになった。
そして
あきこもひろよも
フォロワー数40万人を超える有名YouTuberになり

ママさん相撲専用廻しや
女性が裸で相撲を取りやすい相撲の施設の監修などの仕事にも携わるようになって行った。

2022年7月18日月曜日

岸田さえこ 29歳 子供3人

ママさん相撲の名門
二色浜相撲クラブの団体優勝の記念写真
5人女たちが裸にまわし姿で満面の笑顔をうかべて、優勝盾やトロフィーなどを手に収まる
その後ろに4人の女たちがTシャツ姿でやや控え目な笑顔で映っている

その後ろの真ん中に映るのが
さえこだ

ママさん相撲の大会の団体戦は
3人の大会もあるが
公式の大きな大会では5人が多い

そうなると
総勢9人の二色浜相撲クラブの会員から
5人のメンバーを
個人戦の成績や
どうしてもクラブの代表の富子がメンバーを決めきれなかった時に行われるクラブ内での選考試合などの成績などをもとに選ぶことになるのだが

さえこは
いつも
団体戦では次点の補欠メンバーになることが多かった

だから
いつも大会の個人戦のあと
団体戦では
誰かがケガなどしたら代わりに出られるようにまわしにTシャツ姿で
仲間たちのサポートなどをすることが多かった。

さえこはその団体戦メンバーの座をいつも
スンデのところで逃すことが多かった。

だから子供たちからも
「おかあさん、今日はお昼はお相撲おやすみなんだね」
と、外れる度に言われていた。

「西方、次鋒、原田ときこさん」
鳴り響くアナウンスをさえこは
悔しさ混じりの心持ちで観覧席から聞いて
土俵を見つめた

この大きな大会の団体戦の決勝の土俵に
自分もあと少しで立てたのかと思うと
クラブが優勝する嬉しさ
と同時に悔しさも
心の中に揺らめいた




いつも
団体戦メンバーの最後のひと枠を
ときこと争うことが最近、多くなった。

クラブに入る前も夫と
夜な夜な営みの前の戯れで相撲をとり
夜のニュースで欠かさず
相撲のニュースをチェックするぐらい
元々、好角家だったさえこは

国の少子化政策にアテ込んで
大手宅配運送会社のセールスドライバーの仕事を辞めて
家庭に入った。

セールスドライバーは
結婚して子供ができてからも好きで続けていた。

国の政策が始まった頃に
2人目の子供を妊娠して
夫などと相談して仕事を辞める決断をした。

そして、2人目の子供が保育園に入り
時間に余裕ができたときに
ママさん相撲の存在を知り
さえこも初めてみることにした。

元来
支店内の売り上げ1位を何度か取ってしまうほど、負けん気と向上心が強いさえこは
どうせやるならと

ママさん相撲黎明期より、名門として存在した
二色浜相撲クラブを選んで入会した。

全くの素人で始めたママさん相撲でも
さえこはセールスドライバーの仕事で
重い荷物を運んで鍛えた体の強さを武器に
成長を重ねた。
土俵そして
すぐそばにトレーニングに最適な砂浜があるなど
恵まれた練習環境もあって
小さな大会などでは
たまに優勝してしまうこともあった。
しかし、大きな大会の個人戦では
同じクラブのだれかに優勝を阻まれることも多かった。
そして、そのことを悔しく思うさえこは
家でも子供を背中に乗せて腕立て伏せなど
トレーニングに励み

普通なら仕事を辞めて
出産などを経ると
脂肪が垂れ下がったり
だらしない体になっていくことが多いのだが

さえこはむしろ
産後1年半でも
仕事を辞める前より力強く引き締まった
モデルかアスリートのような体つきになっていた


そういう意味でもママさん相撲を始めた成果はさえこの身体には現れていた。

それでも大きい大会ではなかなか優勝できず、
団体戦にもなかなか出られないことにはもどかしさを感じていた。

クラブのメンバーとは
土俵の外ではものすごく和気藹々として仲が良いのだが
裸になって練習用のふんどしを締めこんで土俵に入ると

互いの競争心からか
張り詰めた緊張感が漂う。

 申し合や三番稽古などは
あまりに白熱しすぎて
喧嘩気味になるときも時折ある


練習中でも
特に原田ときことの取り組みになると
さえこの心の中にもより強いものが籠る

近所の漁師町の女性で
今も時折、夫の手伝いで
魚の荷降ろしなどをやっているらしい

元々はスポーツなど運動はなにもやって居なかったらしいが

夫の仕事の手伝いなどで
足腰が鍛えられ

さえこのようにモデルのような引き締まった身体に
浅黒い肌色の身体

そして
さえこの全身に日焼け止めを塗りたくった
白い身体の取り組みは

周りにも
白と黒の対決として
クラブ内では大いに注目が集まる

2人とも練習時間以外のトレーニングも欠かさずやっており
体のくびれ具合や
胸のせり出し具合も
日に日に互いに競うかのように
その見た目の美しさを増していっていた

個人戦の成績が互角になることが多く
特に
大きな大会前は

練習中の三番稽古や
申し合などの対戦内容などで

どちらかが
5人制の団体戦のメンバーに入ることになることが多く

日頃のクラブの練習は
そんな
当落選上の2人の競い合いの時間の1部でもあった

  さえことときこは入会した時期も近く、学年も同じで、
子供2人の歳も近く
最初の頃は、よく、土俵の外のトレーニングの時間でもペアを組み、手押し車なを共にし、
活動のない日でも
互いの家に招き合って自主練習をするほど仲が良かったのだが

ある夏の日
さえこの日焼け止めの臭いで
邪魔をしてくる

と因縁がまじく言ったことで
練習中に取っ組み合いの喧嘩に
なりかけ

まわりのメンバーが仲裁に入り
場は納まったものの

それ以来、互いのライバル心もあって
あまり、お互いに口を聞かなくなってしまった。

ここ1年、どちらかがメンバーに入るとどちらかがメンバーから漏れるということが多く続き、
練習中でも、距離を置き
互いに必要な会話しかしなくなっていた

ときこのほうも
「今日はさえこさんが出てるからママは出てないんだね」
とか
子供から言われたりして
それとなく
さえこを強く意識するようになっていった

クラブの練習でも
練習終わり間際に
クラブの代表の
富子から
三番稽古に
さえことときこが
指名されることが多くなっていった

クラブの仲間たちも
この三番稽古の意味がそれとなく察しが着いていたので
三番稽古となる度に、毎度、鼓吹を飲んで見守っている

こないだの練習では
スタミナに分があるときことの
三番稽古で4勝5敗と
ときこに勝ち越されて

今日の大会の日を迎えていた

このところ
ときこに負けることが多かったが
今日の午前の個人戦では
久しぶりにときこに勝った。

そのあとはトーナメントの早い段階で負けて
入賞こそならなかったが

自分の状態が上向いてきていて

ここからもう一度、取り返そうという
相撲に対する気持ちの盛り上がりがさえこに芽生えていた。

そんなこんなな中で
2人とも
3人目の子供を妊娠した。

さえこもときこも
相撲をはじめたことで
身体つきなどがより魅力的になり

夫からの夜の誘いが増えていた。

さえこもときこも
悦んで、その誘いにのり

似た時期に
妊娠して、

3人目の子供をそれぞれ
無事に出産した。

そして2人は
同じ日の
『産後1年以内のママさん相撲に関する説明会』
に参加することになった。

この会では
まず、
産後の身体で相撲に取り組む際に注意すべきことなどの座学を受講し

記念会食のあと

化粧廻し姿に着替えて
子供を抱いて記念写真を撮影し

その日集まった母親達同士で
相撲大会を行う

という流れのイベントである

国策の成功を祝う意味合いもあるので

この大会での優勝賞品等は
高級車や高級腕時計、貴金属類など
とても豪華なものになることが多い。

故に
取り組みはいっそう激しいものとなり

取組後の女性たちと土俵の母乳で白みがかった光景は大会の風物詩ともなっており
「白相撲」とも呼ばれる

産後1年の会を前に
1度、クラブに顔を出すことになり

さえことときこは
久々にクラブの練習に参加した
「少し太ったんじゃないの」
「あんたもね」

久々に海風の下で
服を脱いで練習用のふんどしに着替える時
陰部にあたる海風が心做しか心地よく感じられ
なんとなく、開放的な爽快な気分になった

そして
クラブの主催者の富子に促されて
2人は「白相撲」への抱負を語った。

「サエコさんに買って高級車を貰って帰りたいと思います。」
「ときこさんには勝ちたいと思います。
負けません」

妊娠、出産等で相撲を離れていても
互いへの消えないライバル心が
2人の口からは感じられた

それから
2人を中心に
その場に居る
メンバーや関係者と
記念写真の撮影が

行われ
練習に入っていった

そして
2人には
それぞれ

さえこには、花房たかえ

ときこには、嶋えつこ

練習パートナーが
富子から
指名され

それぞれに練習に入っていった

この流れ

クラブから「白相撲」参加者が出た時の
いつもの流れなのだ
さえことときこも
入会して間もない頃
「白相撲」に参加する先輩メンバーの
練習パートナーに選ばれたこともある

ここでは
練習パートナーを練習相手に
少しずつ相撲の勘を取り戻しつつ

主に若いメンバーが担う
練習パートナー役からの
出産や育児などに関する相談に乗り

また、相撲の技などを教えて

若いメンバーを育てる役割も
期待されている。


そして母乳がでるうちは
原則
特に常設の相撲場では
土の土表はあまり使わないことになっている

土俵の土がつくことにより乳房の衛生状態と

母乳が飛散することにより
土俵の土の衛生状態に
共に良くない

と考えられているからだ。

 
   さっそくさえことたかえは
砂浜の一角に足で土俵を書いて練習を始めた。

小太りの2人が相撲の練習をする光景は
本土表でモデルみたいな体型の女たちが練習するのより
ある意味、相撲っぽいかもしれない

向こうでも、ときことえつこが書いた土俵で練習を始めていた。

四股や股割りなどのウォーミングアップを終えると
まだクラブに入会したばかりのたかえの実力を把握するために
三番稽古に入った

仕切り線を挟んで 
蹲踞の姿勢でたかえと向き合った

家ではたまに夫に頼み込んで
練習相手になって貰って相撲をとることも
たまにあるのだが

久々に裸にふんどしを締め込んだ
若いたかえの裸体をみて
ひさこは密かにドキドキした

そして
「はっけよーい、残った」
声を合わせて
最初の取り組みに入った

たかえの若い身体がまっすぐぶつかってきて
さえこが受け止めることになって
バチンと
音が鳴った
そしてグイッと互いの後ろ廻しを掴んで引き付け合い
身体を密着させて
力比べになった。

この立ち会いの時の音、 この女性の身体ならではの感触
全てが久しぶりで
立ち会いからの全てが快感だった

そして
たかえが果敢に投げを打とうとしてきたところを

どうにか防ぎ
ややバランスを崩したところを
逃さずにたかえを地面に転がして

どうにか先輩の貫禄で
勝利した。


その後も4番ほど続けて取り組みを行った。

たかえは
技や手数は少ないが
相撲を始めたばかりにしては
組み合った時の圧力が強いと
感じた。

最後の1つ前の1番は
たかえに押し出され不覚を取った1番もあったが
最後の1番はたかえを吊り上げて
どうにか制した。

そのあと
自分の母乳や
砂で汚れた身体を
海に浸かって洗い流して

たかえと
いろいろと話した

たかえとえつこは
同じ日に入会したが
お互いをまだ下の名前ではなく
花房さんと嶋さんと
苗字で呼びあっているらしい
そういえば
入って間もない頃は
ときことも
原田さん、岸田さんと
苗字で呼びあってたなと思い出した。

そして
同期のえつことの関係について聞くと
土俵の外では仲はいいが
土俵に入るとバチバチした間柄になるようだった

入ったばかりの頃はまだ
ママさん相撲のルールの張り手禁止をしらずに
練習中にえつこと対戦した時に
向こうが先に頬を張ってきたので
コッチも張り返して
それから
肩や溝落ちや
胸上などを張り合い
になった1番が
あったこと

その相撲に
決着がついたあとも
えつこが掴みかかってきそうな感じになり
たかえも受けて立つ構えを見せたので
周りの先輩たちが
間に割って入り話し合いになったが

練習前のお茶の用意に
たかえがなかなか来なかったことに
えつこが腹を立ててたらしい

たかえもえつこにいろいろと思うことがあったり
それまで遠慮勝ちだった
二人の間に
急激に確執が広がりそうになったが
その後
2人だけで食事に行って和解したらしい

先輩たちからは
「ここのお相撲は張り手禁止だから」
と厳しく注意された
という話も聞いた

たかえとえつこの2人だけの食事では
互いにこれまでの事を謝りあったあと
終始
子育てやこれまでなど
の話をし
食べ終わる頃に
「わたし、嶋さんには負けたくないと思ってるの」
「わたしもみんなに負けたくないおもってるけど花房さんには特に思ってるよ 」
互いのライバル心を確かめ合う話になり
土俵の下では仲良くなったが

土俵の上で対峙する時
周りからあの二人
喧嘩でもしてるのかと
たまに心配されるぐらい
激しい取り組みになることが増えたらしい。

自分たち自身に関することもそうだが
たかえを育てることに関しても
ときこには負けたくないな
さえこは思った。

その後
互いにぶつかり稽古をして

押しや受け身の動作を確認して。

最後に
1番だけ相撲を取って

さえこたち、この日の練習は切り上げた。


そして
たかえと何度か練習をしつつ
白相撲の日を迎えた。

前夜に久々の試合用のまわしを試着してると
夫に後ろから抱き寄せられた

ママさん相撲には夫婦円満の効果もあるようだ

子供たち3人ともを連れて
車で会場にきた

同じようなタイミングで駐車場に入った
ときこの姿も見えた

ときこ一家に挨拶し
並んで会場に入った

それから
1番下の子は
市の係の担当の人に預け
子供たちは会場内の子供スペースに行かせ

まずは座学を聞いた。
そのあと
県知事なども招いた記念会食をし

食事の最後に
今回の白相撲のトーナメントの組み合わせ抽選が行われた。
同じクラブ同士では上の方まで当たらない仕組みになっており
ときことは勝ち上がれば決勝であたる
組み合わせになった

それから
化粧廻し姿に着替えて
まずは
参加者全員で集まって記念撮影をし

そのあと
年内に生まれた子供を抱いて
個人ごとの記念撮影になった


記念撮影中の参加者は
写真では笑っているものの
1回戦であたる相手の近くを通るときなどは
どこかお互い
気まずかったり
殺気立ったりした空気になった。

それから

化粧廻しを外して
試合用のまわしに衣装直しをした
今日の白相撲では
自治体から貸し出された下がりをつけて
取り組みに臨むことになっていた

同じクラブの
ときことウォーミングアップを一緒にやった
こうしてウォーミングアップをするのは
入ったばかりの時以来かもしれない

「今日は日焼け止め塗らないんだね」
と冗談めかして声をかけられた

やっぱり
この人には1番負けたくない
思った。


それから
取り組みに入った

「ママーー、がんばって~」
と子供たちの歓声が響く土俵
久々だけどいいなとさえこは思った。

どうにかトーナメントを勝ち上がった
自分たち以外は
練習してきてないのか
と思っていたが
なかなかキレのある動きをする人が多くて
意外と苦戦した。

飛び出る母乳の感じのほかに
組み合った時に感じる
少し硬くなった乳房や胸
そして
脂肪がのってやわからくなった女の体の
感触

これらは
こういった白相撲独特のものかもしれない
さえこは思った。

そして
ようやく迎えた決勝の1番
相手は1番、倒したかったさえこだ
向こうもなんとか
勝ち上がってきた様子だった。

立ち会い
土俵の上にて
目を合わせさえことときこの
負けたくない気持ちが
眼差しを介して交錯する
約1年半ぶりの対決になった

久々に土俵の仕切り線を介してみた
浅黒い肌

会場のなかでも
常に意識しながら目線を送ってきた
そのときこが目の前に居るさえこの胸の中に高鳴るものを感じた。

「かまえて、まったなし、はっけよーい、残った」

その審判の合図に合わせて


バチンと勢いよく中央でぶつjかり
2人は土俵中央で久々の力比べを楽しむかのように組み合った

そして右に左に主導権を奪い合い

互いに左右の腕をかちあげて体制を入れ替え

そしてマワシを再びつかみ合って
組み合ったところで
衝撃で2人のさがりが外れ

さえこがかちあげた両手でときこが後ろにふきとび
さらに組みかかったところで
さえこが足をウレタンの土俵と吹き出た母乳や汗で足を
すべらせときこだけがマワシをつかみ
万事休すかと思われたが
押し込まれた先に落ちていた耐滑素材のさがりがさえこの足に引っかかり
こんどは足下の母乳や汗でバランスを崩したときこを
土俵の外に投げ飛ばし
今日の勝負はさえこが勝った。

さえこは土俵際に崩れ落ちた時子に手を貸し
ときこもそれに応じて立ち上がると
ふたりは健闘を称え合うかのように肩を抱き合い
それぞれに清々しい表情で
その後の表彰式に臨んだ。

サエコの子供たちからは
「ママ、やったね~ 新しいトロフィーだね」
「新しい車がもらえるねーーー」
と声が上がり

敗れた、ときこの子供たちはうつむき加減で言葉少なな様子なのを見て
トキコが
「牛肉1年分貰ったから、今晩は焼き肉ね」
と肉をみせて声をかけると
子供たちは
やったーーー
と元気な声を取り戻した。

でも、内心ときこは
やっぱり子供たちはわたしがさえこさんに勝つとこ見たかったんだろうな
と思いつつ

さえことときこ
貰ったおむつなどを抱えて
子供たちを車に乗せ
会場を後にした。

それから
二色浜相撲クラブでは
また別の1人が産休に入り
ちょうど人数が10人になり
団体戦のメンバーはAとBで固定制になった
ときこはえつことAチームに入り
さえこはたかえと一緒にBチームに入ることになった

これでさえことときこの対決の機会は減ると思われたが
クラブ内の競争意識の低下を危惧したの代表の富子の発案で
クラブ内の順位戦も定期的に行なわれるようになり

対決する機会は定期的に確保された。
さえことときこは
順位戦を勝ち上がって
お互いに大将同士で団体戦の決勝であたりたいね
と話し合うようになり
競い合いつつも支え合う関係を築いていった。

ママさん相撲の普及に伴う
政府の既婚で子持ちの女性に対する給付金政策による美容効果と
それに伴う、少子化抑制効果は
政府の期待通りのようだ。