2022年10月23日日曜日

井川しおり30歳 子供2人

わたしのおかあさんはママさん相撲の選手です。
わたしが幼稚園のころ
まほちゃんやさとしくんのお母さんと
温泉に行くと
よく
お母さん同士でお風呂用のエプロンを腰に巻いてお相撲をとって遊んでいました。

いっぱい勝った日はなんだかうれしそうで
いっぱい負けた日は
なんだか悲ししそうでした。

ある日から水曜日と金曜日は
お母さんはお稽古事があると行って
家に居なくなりました。

日曜日もたまに
私をお父さんやおじいちゃん、おばあちゃんの家に預けてお出かけするようになりました。
 
たまに日曜日に
お父さんと車で大きな公園にお出かけするようになりました。

大きな公園に行くと
お母さんやまほちゃんやさとしくんのお母さんが
はだかにお相撲用の大きなパンツを履いて居ました。


他にもはだかの女の人達が
お相撲の大きなパンツをはいて
土俵の周りの椅子に何人も座っていました。

お母さんたちのお相撲大会のようでした。


着いてしばらくすると
お母さんたちの出番がくると
お母さんはまほちゃんのお母さんとさとしくんのお母さんたちと
一緒に並んで座り

勝つと
一緒に喜んで

応援していた
お父さんもさとしくんやまほちゃんのお父さんと喜んで


負けると
悔しがったりしていました。

そして
終わると
買った時にもらった封筒からお金を出して
ジュースとかを買ってくれました。

負けると封筒はないので
お相撲のあとはなにも買ってくれません。

そして
お昼ご飯のお弁当を
まほちゃんたちやさとしくんたちとそのお母さんたちとみんなで食べたあとも

またお相撲が始まりました。

お母さんは
私をギューッと抱きしめてから
土俵に行きました。

最初はお母さんたち同士やお父さんたち同士で
話していたのですが

私のお母さんはまほちゃんやさとしくんのお母さんと順番こでお相撲を取らなくなりました。

そしてお母さんたちがお相撲を
何回か取りました。

さとしくんのお母さんがお相撲に負けると

とても悔しそうなさとしくんのお母さんをさとしくんのお父さんがなぐさめて
さとしくんのお家の人だけ帰っていきました。

それから
わたしのお母さんとまほちゃんのお母さんの
お相撲になりました。

お父さんたち同士がさっきより全然、話さなくなりました。

わたしのお母さんとまほちゃんのお母さんは
「まったなし、はっけよい、のこった」
合図される
パチパチとケンカみたいに激しく叩き合い
そして
2人の自慢の大きなお乳を潰し合うような勢いで抱き合い

お母さんがまほちゃんのお母さんに土俵の外に押し出されて負けてしまいました。

勝ったまほちゃんのお母さんは
とてもうれしそうで

負けた私のお母さんは悔しくて泣いてしまい
お父さんになぐさめて貰ってました。

それから
お母さんが1人でやっていた腕立て伏せや腹筋や背筋の運動を
お父さんともやるようになり

お家でもたまに
お母さんとお父さんが
はだかでお相撲のパンツを履いて
お相撲の練習をするようになりました。

お父さんが勝ったり、お母さんが勝ったり
なんだかとても楽しそうでした

そんな日が何回か続くと
お母さんやお父さんから
「りさ、まわしとってきて」
と頼まれると
家の庭に干してるお相撲のパンツを取ってくるのがわたしの仕事になりました。

それから

しばらくして

また
お父さんとお母さんのお相撲を見に行きました。

最初のお相撲では
勝つとさとしくんのお母さんとお父さんやまほちゃんお母さんと、お父さんとみんなで大喜びしました。

特に最後のお相撲で
さとしくんのお母さんがお相撲に勝つと
お母さんの相撲クラブのひとたちみんなで
大きな声をだして大喜びしました。


そして
そのあと
さとしくんのお母さんが呼ばれて
金色の大きなコップを
白い服の人達から貰っていました。

それから
それを持ってみんなで
写真を取りました。

そして
お弁当を食べると
お昼からのお相撲になりました。

お相撲が何回か取り終わると
負けたお母さんの家の人たちは
帰っていきました。
そして
それぞれの家のお父さんたちは
さとしくんやまほちゃんを連れて

朝よりバラバラに離れて
お相撲を応援します

そして
私のお母さんとさとしくんのお母さんのお相撲になりました。

お母さんとさとしくんのお母さんは
お相撲が始まると
身体をぶつけ合ったあと
2人の自慢の大きなおっぱいがぎゅーっと当たり会う感じで抱きしめ合い

右に左にグイグイと動き回り

お母さんがさとしくんのお母さんを投げ飛ばしました。

勝った私のお母さんはお父さんとすごく喜び

負けたさとしくんのお母さんほさとしくんのお父さんとすごく悔しがっているのが見えました。

そしてそのあと
さとしくんのお母さんのお相撲が始まりました。

さとしくんのお母さんが勝つと

お父さんたちが
さとしくんのお父さんお母さんのとこに行ってみんなで喜びました。

それから
わたしのお父さんとまほちゃんのお父さんがまた
話さなくなりました。

私のお母さんとまほちゃんのお母さんのお相撲になりました。
お相撲が始まると
私のお母さんとまほちゃんのお母さんは
方や顔や胸を叩いたり押したりしながらお相撲を取り始め

2人の自慢の大きなおっぱいのしたで腕の力比べになり
いつもわたしが用意してる
まわしを
掴んで抱きしめ合いながらグイグイと
動き回り
私のお母さんがまほちゃんのお母さんを投げ飛ばしました。

投げ飛ばされて泣いてるまほちゃんのお母さんに私のお母さんが手を出して上げて
起こして上げて
お母さんがいつもお相撲前に私にしてくれているように
まほちゃんのお母さんを優しく抱きしめてあげて
なぐさめて
上げてまほちゃんのお母さんは土俵を降りていき

そのあとお母さんは
東京タワーのようなものを白い服の人達から貰いました。

そのあと
わたしのお母さんとまほちゃんのお母さんとさとしくんのお母さんは
違う高さの台に乗り
それぞれ違う色のメダルを白い服の人達に首から掛けてもらっていました。

負けた時に泣いていたまほちゃんのお母さんも
さとしくんのお母さんも

みんな嬉しそうでした。

それから

家に帰ると
いつもお母さんのお相撲大会の日は
ご飯がすき焼きになったり
なんか豪華になるのですが
今日は大きなお肉を焼いて食べました。




そして
ある時から
お母さんのお腹が大きくなり

お母さんはお相撲に行かなくなり

弟の龍太が産まれました。

それから
りさはお姉ちゃんなんだから言われるようになり

お母さんは龍太の世話に付きっきりになりました。

そんなある日

「りさ、まわし取ってきて」
と久しぶりに頼まれました。

お母さんはまたお相撲の練習に行くようになりました。



ある日
お父さんとお母さんと龍太と
お父さんの車で大きなホールに来ました
周りには赤ちゃんを連れた女の人がいっぱい居ました。

お母さんや女の人達ははだかになり
まわしに大きな幕を付けた姿で
連れてきた赤ちゃん抱いて写真を撮り、

豪華な食べ放題のお昼ご飯を食べたあと

お母さんたちはまわしから幕を外して
かわり
細い暖簾のようなものを外して
お相撲をとる時間になりました。

お母さんは何回かお相撲に勝ってから
相手の人に投げ飛ばされて負けました。

お母さんは対戦相手の女の人に起こしてもらって
泣きながら帰ってきて
お父さんに優しく抱きしめられてなぐさめて貰ってました。


お母さんがお相撲をはじめてから
お父さんとお母さんがなんだか
楽しそうで
前より仲良くなりました。

私は
お相撲のときはなんだか怖いけど
お相撲を撮り終わって帰ってきて
所々赤くなった身体で抱きしめられてる時が
なんだか好きです。

そして
お相撲のときは
なんか怖いけど
力強くて優しいお母さんが大好きです。

私も結婚して子供ができたら
お母さんみたいにお相撲を始めてみたいと
最近、思います。

                                                                      井川りさ

2022年10月17日月曜日

とあるカップリングパーティー

石堂たみこは金曜日の仕事を終え
帰り着くと
大きめのリュック
着替えなどを詰め込んだ

明日は月に1度のとあるサークルの旅行イベントに参加する日だ
そして起きると入念にメイクをし
集合場所に向かった

集合場所には男女8人ずつの参加者
と旅行会社の数名が泊まり程度の荷物を手に待ち構えていた

ここでツアー会社の用意したバスに乗り込むと

バスの中は
全員の顔が見えるように真ん中を囲んで座るタイプのシートになっており
移動中の車中では
まずは参加者の自己紹介などが行われる

参加した
男女はここで今日のおめあての人の品定めをはじめ
バスの行き着いた先のイベントで
おめあての相手を決めていき

イベントを楽しんだ後の
入浴と食事会後の
「告白の時間」
と呼ばれるイベントになる
 
このイベントでその日の夜のパートナーを決めるマッチングが行われる。

たみこは、キャリアウーマンとして
1人で生きると決めては居るものの
やはり、どうしても異性との交わりを
欲する欲求が年を経るごとに高まり、
それを埋め合わせるために
インターネットで
そういったツアーがあるのをみつけ
旅行会社のホームページで申し込んで参加するようになった。

「告白の時間」


参加者たちは
一糸まとわぬ全裸で
男女に別れて向き合って座り

最後の品定めを行い
意中の相手を定める


たみこはツアーに複数回参加するうちに
1人の男性に魅了されるようになった

高見沢かずひで
彼が同じツアーに参加していると
胸を高鳴らせて
彼に様々なアピールを行い、
「告白の時間」に向けて
ライバルとなる他の女たちを牽制し
意中の男を自分に振り向かせる様々な努力をし

「告白の時間」を迎える

この時間は
基本的に女性にのみパートナーの選択権が許される。

そして
女性参加者同士の希望するパートナーがかち合った場合

女性参加者同士の全裸での相撲対決により、かち合った男性のパートナーを決める


そして
女性の志望がかち合った男性がこの相撲の行司役を務める

つまり
際どい決着になった場合は
男性の意向が大いに反映された 
判定になる

だから
女性たちは
昼間のイベントで
意中の男性を見定めると
他の女性に牽制しつつ
自分をアピールして
際どい時は自分を選んで貰えるように
その男性のそばにべったりと張り付いたり
身の回りのお世話をしたりするのがよくある光景で
そんな男性に
自分と同じように張り付いてくる女性が
その夜の「告白の時間 」の対戦相手になることが多い

たみこは
かずひでを求めて挑んできた
様々な女の挑戦を退けてきた

かずひでもまた
次第に際どい判定には
たみこに軍配を上げてくれるようになった。

他の女と争った末に勝ち取った
かずひでとの夜は格別な快感に溢れていた

かずひでと交わる快感が大多数を占めるのはたしかだが

自分が勝ち取った男との1夜という
快感が
その夜の交わりの快感を最上に高めてくれた。

人は心を純粋にすると、目的のために殺し合うことさえ厭わないまでに闘い争い会うようになることがある。
それが異性との交じわい求めるものである場合
そのことはより顕著になる。

それはその女性たちの子宮がより良い遺伝子をもつ男性を求め、
そしてその男性を我が子のより良い父親とし独占しようとする欲求から来ているのかもしれない


そういった
女性特有の闘争欲求
独占欲求を満たした

最高の夜を
毎月の糧にたみこはキャリアウーマンとしての日々を過ごしていた。

しかし
とある夏の始まりの
6~7月に
たみこは仕事が多忙を極め
ツアーに参加できない
時期があった

そして久々に参加した8月
この日のツアーの行先は
海辺での海水浴とバーベキューだった

たみこは新しく買ったビキニを身につけ
ツアーに参加した

5月まで
それとなく
どちらからともなく
かずひでと一緒にこの時間を過ごすことが
多かった
かずひでと居合わせたこのツアーだったが

今日は
かずひでは
別の女の方に足がむくことが多い

石嶺りょうこ
という女に気がいっているようだった

たみこは
かずひでの気を引くために
わざと
ほかの男と
仲良く
いろんなことをするが

それでも
かずひでは
りょうことべったりだった

そして
迎えた「告白の時間」

たみことりょうこは
かずひでを巡ってかち合い

たみことりょうこは
ホテルの宴会場の土俵で向き合った。

スタッフの合図で取り組みは始まった

たみことりょうこは
手と手をあわせ
上腕と前腕に力を込めて押し合う
2人の自慢のFカップはあろうかと言う
巨乳の乳房を硬直させ

憎き恋敵と力を競いあう

その嫉妬心と怒りに任せた昂りから
くる高揚感に身を任せ

押し合う腕を軸に右に左に
前に後ろに力を掛け合うなかで動き

腕をぐねらせる

それでも勝負はつかず

自慢の大きな胸と胸を付き合わせて
組合

相手の女の荒い息遣いを感じながら
投げを打つタイミングをさぐり合う

そして
投げを打ち
掛け投げで相手もろとも
土俵に倒れ込み

軍配はかずひでの土俵に委ねられた

かずひでは
重く苦々しい顔で
りょうこを選んだ

りょうこは
かすひでの今夜のパートナーとして
かすひでの横で
恍惚の表情を浮かべて

その他の告白の時間の終わりを待ち

たみこは
その他の男と
自暴自棄になりながら夜を過ごした。
そのフラストレーションをぶつけるかのように燃えるような激しい夜を過ごした。
ほかの女を選んだかすひでへの怒り

そしてりょうこへの嫉妬心

たみこは
他の男に激しく憑かれてピストンされ
快感に揺られながらも
これらの感情に心揺すられる夜を過ごした。

それから
パーべキューや
秋の梨狩り

でも
かすひでやりょうこと一緒になったが
りょうことかずひでは
あの日のたみことりょうこの対決を経て
更に絆を深めたかのようにべったり
仲睦まじくくっつき

たみこもそんな2人の様子を見て
ほかの男を選ぶようになった

そして

冬の相撲大会の日

たみこは
男性の部を眺めていた

1人の魅力的な男性の存在に目を奪われた
その男性は
たみこより一回り近く若く
年上が好みで
たみこが好むような筋肉質な体つきをしていた

決勝戦で
その男性はかずひでと対戦し
僅差の相撲で勝利した。

その石崎ひろやのまわし姿に
心惹かれるものを感じ

女子の部が始まる前に
ひろやに
たまたまなフリをして

まわしの締め込みを手伝って貰うなど
積極的なお近づきをはかり

女性の部が始まった

1回戦の対戦相手は
かずひでを巡って
火花を散らした
りょうことの対戦になった

たがいにあの時の怨念を晴らし合うかのように激しく張り手を打ち込み合い

組み合いに持ち込むと

たみこはりょうこの足をひっかけ
力強く
りょうこを土俵に叩きつけた。

そして

たみこの他にひろやにまわしの締め込みをしてもらった
自分よりやや若いひろよと対戦し
激しく組みあった末に引き落としで下し

決勝戦では
いつも決まった相手と一緒にいる
ゆりかと対戦した

男を取り合ったことはないが
いつかかち合ったときのために
牽制する気持ちが互いにある2人の相撲も

激しい張り手の打ち合いから始まり

大きな胸と胸を合わせて組み合う形になり
投げの打ち合いをどうにか
たみこが制して

プレゼンターの男性の部の優勝者ひろやから
優勝景品を受け取ると
勢いよくひろやに抱きついて
ひろやにアピールをした。

そして
まわしを外して
「告白の時間」
になり

たみこは迷わずひろやを選ぶと
2人の女とかちあった

たみこ
1人目の女を張り手合戦のすえ
土俵にくずれ落とさせて破り

もう1人の女とは
張り手合戦から腕を絡めあっての長い相撲になったが
経験の差でなんとか振り切って土俵に沈め

ひろやとの夜の権利を勝ち取った。

ひろやとたみこは
その夜ベッドで
この上なく
激しく求め合い
激しく満ち足りた一夜を共にした。


2022年10月8日土曜日

宅和かえで 24歳 子供1人

高校卒業してしばらくファミレスで働き
そこで仲良くなった常連の工場作業員と付き合うようになり
それが結婚して早5年になる今の夫だ
子供は4歳になる
国の子育て給付金制度と夫の収入で
確かに働かなくても生活はできるが
それほど余裕のある暮らしでは無い
かと言って
前のようにファミレスでまた働き始めると
パート雇用なので
給付金からの給付要件からは外れ収入は減る

そんな悩みをかかえる日々
子供の児童園の参観日に向かった
いつものように少し早く来て
いつものコインパーキングに車を停め
いつものお気に入りのコンビニのミニストップ
に立ち寄った
コンビニでありながら大きなイートインスペースがあり
食べ物もハロハロやそのほかのスイーツ
そして安価なのに美味しいコーヒーなど
充実し
保育園に用事があるときには
ここに寄り道するのをルーティーンのようにしている
母親は多く
かえでの子供の幼稚園の親達のたまり場にもなっていた
そうして
店内で今日のおやつを選んでいると
いつも懇意にしている
川端よしえと偶然会ったので
そのまま一緒にお茶をすることにした
川端よしえは子供が保育園の同じクラスなことで
参観日などで会うとよく一緒にいるのだが
よしえには
来年、高校にあがる息子や
小学生の娘などが居て
子育てなどの経験が豊富で
なにかと相談に乗ってもらっている

そうして
今日もなりゆきで
子供を私学の小学校に行かせた場合の養育費の話になり

そんななかで


「かえでちゃん、ママさん相撲って
興味あらへん? 」

という話が飛び出した
養育費の話をしてたのに
レジャーの話かとかえでは内心思った

でも、実はかえでより一回り以上年上なのに 見た目は20代に見えて
体型がモデルのように
美しいよしえには
すごく憧れていて
そのヒントになる話かもしれないと思い
かえでは付き合うつもりで話に乗ってみた
「うーーーん、えーーなーーとは思うねんけど
いろいろ物買ったりするお金余裕がなかなかないねんな
よしえさん
こないだ家行った時に
飾ってあったまわし姿で優勝トロフィー持ってる姿凛々しくてかっこええなおもいながらみててんけど
その美しい体型維持するトレーニングしたり
遠征したり
結構、お金かかるんちゃうん」
よしえは
素直に疑問をぶつけてみた

「お金はそんなにかからへんよ。
ママさん相撲は少子化給付のスポーツ上乗せの対象やから
国や自治体から相撲してるって認識されたら
お金月5万ぐらい上乗せして貰えるねん
なら大きな大会で勝てば主催してる県からの御祝儀が1試合ごとに貰えて
優勝したりしたら10万とか貰えるから
むしろ儲かんで
最初はうちもほんまに
お金貰える思ってなくて
美容のためのエクササイズで
ママ友と始めてんけど
少子化にエラい効果があるってことで
国とかが喜んでな
ママさん相撲やろいう人増やしたい思たんかして
ママさん相撲クラブに所属してたり
国や県の大きい大会に参加したら
うわのせでお金くれるようになってん
ほんで、うちのあの車、相撲大会で優勝した副賞でもろてん。
強い人に車乗ってもろたら
インタビューコラムとかの話題にもなって
車に疎い主婦たち宣伝になるいうことで
何個かの車会社がスポンサーになってくれてるねん」
その話を聞いて衝撃が走った。
よしえのクラウンには何度か乗せてもらったりしたことあったが、
よしえが車体の大きなクラウンに乗っていることをかえでは少し不思議に思っていたのだ
家に行った限り
よしえもその旦那もVIPカー好きそうでないし
それまでは型の古い軽自動車に乗ってきた
よしえがなんで、ある日突然クラウンに乗りだしたのかと
疑問に思ってきたがそれを聞いて
腑に落ちた
「なんやったらうちのクラブのメンバーに登録してるだけでも
スポーツ上乗せいう形で
給付金に上乗せあるねん」

いつも頼りにしてるよしえからとはいえ
急に降って湧いたような話に疑いの心がわき
かえでは尋ねてみた
「そらすごいなあ
で、なんで
急にうちを
そんなお相撲に誘ってくれよ思たん?」

「うちらのママさん相撲クラブ、最近は5人で活動しててんけど
1人辞めたから
団体戦の人数が揃わへんようになってしもてん
若くて元気なかえでちゃん入ってくれたら
ええ感じになるんちゃうか思て
誘ってみてん」

「そうなん
廻しとか要るもんはどないするん  ?」
「クラブに新品で余ってるのあるで」
「そうなん、お相撲かおもしろそうやな
そういうことやったら、是非とも行きたいわ」

「じゃあ次の水曜日来れる?」
「うん、行けるで」
「じゃあ、かえでの家まで迎えに行くわな」
「うん、たのむわ」

あの人 ああ見えて30後半やし
まわりおばちゃんばっかりなんやろな

かえでは
内心げんなりしつつも
お金欲しさ
そして
よしえが30後半になってもあんな美人な秘密を知れるチャンスと思い
参加するということは決めた

子供の養育費も稼げて
自分も美人になれて
一石二鳥かもしれないと思った。







その前に下調べということで

YouTubeでいろいろ見てみることにした
まずは
大きな大会の動画から見た
おばちゃん同士がぬめぬめととっ組み合うだけかとおもってたら

意外と美人で若い人が多い
いかにもギャルって感じのガングロの人も
ハダカに廻し1枚で相撲とってる
しかも強い

どつきあいの様な張り手の打ち合いで決着ついてる相撲もあった

ていうか
参加選手全員の集合写真
人数めっちゃ多い

100人ぐらいは居るわ
とな
知らなかったことに対する驚きがたくさんあった

それから
ふと
二色浜相撲クラブチャンネルという
youtubeの動画をみたら

あのめちゃ強いガングロの女の人が
練習とかいろいろ仕切ってるじゃん
と驚いた









そして、体験入部の当日を迎えた
よしえが実はママさん相撲大会の優勝商品だと言っていた
TOYOTAのクラウンで家まで迎えに来てくれた

かえではその車中でよしえに
インターネットでいろいろ調べて疑問に思ったりしたことなどを
聞いてみた

あのめちゃ強いガングロの女の人は
じつはあのチャンネルを作ってる二色浜相撲クラブの最年長で
年齢38歳ということに驚かされた
これが相撲の美容効果らしい

ママさん相撲がとある学者とyoutuberによってはじまったころは
これが目的で相撲を始める主婦が爆発的に増えていき

その主婦たちは
相撲を始めてから
どういうわけか子供をさらに1人2人出産することがおおく
それも安産で生まれることが多いということで

お役所などの公認になり

自治体公認のママさん相撲クラブ所属者には毎月
相撲クラブに所属していなくても
都道府県などが開催する大きな大会に一般参加する主婦には
その参加した月に
給付金を上乗せして支払うことなどを通して

国はママさん相撲をほかになんこかあるママさんスポーツとともに奨励することをはじめたらしい

これが少子化給付のスポーツ上乗せと呼ばれている

今回 よしえがかえでを誘い文句にしたのは
スポーツ上乗せのお金はこれの事だった

そして大きな大会では
取り組みごとに  勝ち名乗りを受けた勝者に
勝ち目録と呼ばれる封筒が審判から渡され
これを大相撲でもよくある蹲踞をともなった所作で受け取るのだが
そのなかには
主催する自治体からの賞金が入れられている

このお金の額が
周辺の大阪と京都が1律千円で
大都市部の付近ではこの金額が主流なのだが

懐事情が芳しくない奈良では 決勝などでこそ千円なのだが
一回戦や二回戦は300円や500円などであることが多く

これが原因で、
何人かが大阪のママさん相撲クラブに移籍するなどして
葛城相撲クラブを離れ

最近、解禁された張り手やカチ上げを怖がって
2人ほどが辞めていった。

一時期は10人以上のメンバーが居た
葛城相撲クラブは
かえでを除くとメンバー4人で
団体戦の人数すら足りないという窮地に追い込まれたといういきさつを
よしえから聞かされた。

そしてよしえからは
特に
張り手やかちあげなどを
心配されたのだが

かえでは男兄弟で揉まれて育ってきており
殴り合いみたいな事には慣れていた
その上
K-1やボクシングといった
打撃系の格闘技もだいすきで
家でよく見ており
むしろ
張り手の打ち合いなどは楽しみにしていた

そして
田園地帯の中の
体育館やグラウンドなどがある運動公園に到着すると
少し古い武道場に連れていかれた

そこには
少し黄ばんで年季の入り始めたウレタンの土俵が置かれていて
まわりにはパイプいすなどが雑多に置かれている感じだった

意外と、ワイルドな雰囲気なんだなとかえでは思った。

そして着替える場所に着くとよしえから大きな紙袋が手渡された

なかを見るとママさん相撲用の簡易廻しが
入っていたが
二色浜相撲クラブの人達が
練習のときに締めこんでいた
ふんどしの布は入っていなかった
「なあ、よしえさん二色浜の人が練習でつけてるようなふんどしは入ってないん?」
「あれはそれぞれの家で練習したり
海辺で練習したりする人らだけやな
関西圏では宮津とか和歌山の白浜の人らしかあんまりつけへんな
廻しをあんまり潮風に晒したくない時とか
だれかの家とかで自主練習する時とかに使うねんけど
ここの人ら
そんな相撲取れるほど大きい家に住んでへんし
いらんからここいらでは持って変人が多いし
楓ちゃん庭つぃたふくろにも入れてへん
私は個人的にお呼ばれして練習行くとき用にもってるけどな」

二色浜の人達みたいな
色とりどりのカラフルなふんどしをつけるのも楽しみにしてたかえでは内心少しがっかりした

「さっそく、廻しつけて準備運動でもしよか」
よしえは

来ていたTシャツと短パンと下着を脱ぎ

手慣れた感じで緩めた状態の廻しを履いて
廻しを腰の位置まで持ち上げると
まずは腰回りをしめあげて
マジックテープで固定し
お尻から股間にかけて通っている
たてみつを
グイっと
引っ張りこんで
引きしだき
マジックテープでパリッと固定して

腰回りをパンパンたたいて
細かい位置を整えて
ものの2分で裸に回し姿に着替え終わった

いままでよしえを
30代半ばのはずなのに
20代そこそこの自分と変わらないぐらいに若々しく見え
なおかつ30代相応のしっかりした行動や判断できるよしえを尊敬してきたが
二の腕の筋肉が隆起した腕周りや
しっかり6つに割れた腹筋など
スリムでありながらも
均整の取れた
アスリートのような体つき
そして美巨乳と呼べるほど美しく張り出した胸を目の当たりにして
その尊敬と憧れ気持ちはより強まった。

そして
よしえに促されるままに
かえでも服を脱ぎ
よしえに手ほどきを受けながら
廻しに着替え始めた

あまり銭湯などにいかないかえでにとって

家族以外の前で裸になるのは
やはりまだ少し恥ずかしい
そしてなにより
見すぼらしい身体への恥ずかしさ

そんな恥じらいを乗り越えて
かえではまっ裸になり
地面に置いた廻しにまたがり
胴回りのベルトのような部分を自分の腰の位置に合わせた

ここからマジックテープを外すのがかなり硬い
よしえにマジックテープをバリっとはがしてもらい
胴回りを締めこんだ

そして次は縦に走った部分
かえでの腕の力だけでは
引き込めなかったので
よしえに引っ張り込んでもらい
どうにかまわしを着ることはできた

「やっぱり、最近買った初心者用のもっと着るのが簡単なまわしにしたらよかったかな
でもかえでちゃんはすごいな
何人かはこの段階で
裸になんの嫌がって帰っていってんで」

たいしたことではないのだが
度胸を誉められ
かえではひそかにうれしかった

そして
がっちりと強く硬いもので締めこまれてる感じ
それでありながら
お尻まわりや股間の横を風が通る感じ

すごく新鮮なドキドキ感にかえではフワフワした気持ちなっていた

それを見ていたよしえは
「なあ、かえでちゃん
せっかく廻ししめたんやし
私と相撲とろや」
意味深な含み笑いを浮かべながら言った

土俵で相対するよしえを
見て30過ぎたおばさんのはずなのに
明らかに私より美人だ
 以前、代わりにこどもを迎えに行った旦那が
見蕩れたような顔をして
「あのお前の友達の奥さんと今日少し話したけど綺麗な人やったな 」
話していたのを思い出した。
そして
心の奥で嫉妬したあの感情を思い出し
土俵上で手をついた時
よしえをグッと睨みつけた

そして
心の底から
勝ちたいと思って
よしえに組み付いた

よしえもグイッと土俵中央で
かえでを組み止めた

2人は土俵中央で廻しを掴みあった状態で組み合った

この力比べは意外と拮抗して
いたが
少しだけ
よしえを土俵際に押し込めたきがしたが
よしえはかえでの気付かぬ間に体勢を入れ替えた
かえでの左足をはね上げて
土俵上に転がした。

そして
土俵に倒れたままのかえでを見下ろすように
「あんたの旦那ええ男やな
付き合わしてもらってもええか?」
かえでは何を言い出すんだこの人はと
言いながら
体を起こして座ったままよしえを見つめた
「まあ、今のは冗談やけどな
モデルみたい整った身体付きでしかも乳デカイ女がうじゃうじゃ裸に廻し1枚で彷徨いてるママさん相撲クラブでは
たまにあるねん
既婚者同士とはいえな
年頃の男女が
出会ってしまう場やから
女の方も旦那に愛想尽きてたとこにええ男きたら
抱かれたい思て
誘惑してしまうことも時にはあるやろ

男の方もその誘惑にコロッと負けて
ということもない話では無い

女の闘争心はそのまま性欲やから
尚更、そういうことが起こりやすいわな
クラブ内で浮気された女は
その時のアレやけど
相手の女に相撲なり殴り合い掴み合いのケンカなりで
勝負吹っ掛けて
勝てたら
関係を切らしたりできるけど

負けてしもたら
旦那はとられたままやし
陰でほかのメンバーから
甲斐性なくて弱いから旦那を取り返せへんと
影で言われることもあるやろ

ママさん相撲はそういうところもあるねん
でも強くなったら
よほどな女やないと略奪とかしにこうへん
あと
お金も名誉も車とかの欲しいもんも
いろいろ手に入る
ママさん相撲って
専業主婦のおばさんらのレクリエーションに見えて
結構  実力が全てなとこもあるから
そこを忘れんときや

土俵の上で会うたら
誰であろうと敵や
わたしでも
普段、仲良く和気藹々と楽しく練習して
団体戦では力合わせて戦っていく
同じクラブの仲間同士でも
普段、どんな仲良い親友でも

相手殺してでも勝つぐらいの気持ちでいかなあかん


勝った時の奈良県の懸賞金が気に入らんから
大阪とか京都のクラブに移っていった子らも
その子らがある程度強いから
次入るクラブがあってんや 
そんな人間性で
相撲も弱かったら
どこも入らしてくれるかいな
ママさん相撲やるからには
常にどうやったら強くなれるかを
考えて1日1日やっていかなあかん 
まあ
いきなり脅かしてしもたけど
ママさん相撲も暇を持て余した
ママさん連中の遊びみたいに見られ勝ちやけど
そのぐらいの気持ちで土俵あがらんと
ええ思いはでけへんし
お金稼ぐためにやってる人でも
ほんま必死でやったはる」


よしえの話を聞いてるうちに

ほかの3人のメンバーが廻し姿で武道場に入ってきた

その中にメガネを掛けたままの人もいた

それを見たよしえは
「まきこ、相撲するときはメガネとってきい
前も言うたやろ」
大きな声で注意した

「今日は
新しく来てくれた人の自己紹介あるから
まだつけてていいわ
しっかり顔を覚えるねんで
あんたと同い年らしいわ」
そう聞いて
かえでの目線はその若いメガネの女の方に向いた

そのメガネの人はかえでと同じく
150センチそこそこの身長で
カエデとおなじく
産後太りなどでのった脂肪が落としきれておらず

といった体型の
若い女
ショートヘアの黒髪にメガネ


顔だけ見てると
体育会系の部活の女子高生にも見えそうだが
周りの人達が
引き締まったアスリートやモデルのような体型をしているのに

その人だけ洋梨のように緩んですこしお腹が出た体型をしていて
浮いて見えた

よしえには今のところ歯が立たないが
この人となら互角に戦えるかもしれない
そんなことも考えながら

見ているとメガネの女と視線が合った

   



かえでが初めての日ということもあって
監督を務めるよしえに紹介されて
それか自己紹介からかえでの自己紹介からみんなの自己紹介が始まった

「はじめまして宅和かえでです
よしえさんから誘ってもらって
今日ここに来ました。
大相撲とかお相撲のことはまだよく分からなくて
まだお相撲にはそんなに興味はないんですが
ボクシングやK-1は大好きで
家でよく見てます
最推しは武尊選手です
子供の養育費を稼ぎたいので頑張ります
よろしくお願いします。」

率直に素直に自己紹介を終えると
メガネの女からシラケたような
冷たい目線を感じた

そして
何人かの自己紹介が終わり
自己紹介がそのメガネの女の番になった

「山岸あおいです
出身は大分県ですが
結婚を機に奈良県に来ました。
私は子供の頃から大相撲を見るのが好きで
この春に子供が保育園に入ったのを機に
自分でも相撲を取ってみたくなり
始めました。
好きな相撲部屋は九重部屋で
尊敬する人は、同じ大分県出身でもあり
現役時代につき押し相撲で
相撲の魅力を私に教えてくれた九重親方です。
はじめてまだ3ヶ月で
弱いですが、つき押し相撲を磨いて強くなっていきたいのでよろしくお願いします。」


そして練習が始まった
まずはみんなで土俵を囲んで
柔軟運動から始まり
腕立て伏せを行ない
そのあと四股をふみ
土俵を横切るようにすり足を行い
それから YOUTUBEでみてたほかの相撲クラブの練習のように
先輩の胸を借りてぶつかり稽古でもするのかと思ったら

「じゃあ、かえでちゃん 相撲取ってみよか
あおいちゃん、相手してあげて」

よしえの指示が飛ぶ
相撲クラブの練習はもっといろいろ基礎的な練習を
積んでから初めて取り組みをやると思っていたので
かえでは内心戸惑った

それでも
今一番戦いたい相手といきなり戦えることに
かえではわくわくした


そして
かえでが土俵に入ると
あおいもメガネをパイプイスにおいて
土俵に入ってきた

入るといきなりにらみつけてきたので
カエデもよしえに言われたことを思い出しにらみ返した

そして立ち会い

かえでは組かかろうと前に飛び出すと
あおいは
身体だけ当たってきて
カエデを跳ね飛ばし
それから
胸に肩に頬に
こきざみに張り手を繰り出してきた
かえでも負けじと
あおいの頬や肩に張り手を打ち返すも
打ち負けるかたちで
土俵の外に押し出された

そして
2番目の取り組みでは
組かかってきたカエデに対して
あおいも応えるように組み止めて応えて
マワシをつかみ合って組み合う格好に
なったが

それでも
あきらめずに
また、かえでは
挑んで行ったが


そこは二ヶ月の経験の差なのか
組み勝ったあおいがカエデを投げ飛ばし
土俵にたたきつけた

それでも挫けずにまた
かえでは土俵に上り
こんどは
女子相撲の軽量級の選手がやっていたように
低く潜り込んで
片足を取りに行こうとしたが
肩を両手でつかれ
また潜り込もうとするも
両手を引かれて
地面に送り込まれる形で
土俵に倒れた

そして
またかえでは
挫けずにあおいに挑む

こんどは普通に組合になると思われたが
胸と胸を合わせた状態で
力比べを仕掛けてきたとかえでは思ったが
あおいはかえでの廻しから両手を離し
押し合いながらしゃがみこむように少し体勢を低くし
かえでの右足をつかんで引き上げ
かえでを地面に叩きつけた

そして
倒れたかえでに手を差し出し引き起こすと
「宅和さん!
さっきやろうとしたのあれよね?」
したり顔で話しかけてきた


そして見ていたよしえから
「2人はここからは休憩しながら
先輩らの相撲を見学しとき 」
と 声が掛かった

それから2人の取り組みの講評を始めた
「あおいちゃん  いろんな技試すのはえぇけど
今日、お相撲始めたばっかりの人やから  
もうちょっと考えたり」

「かえでちゃん、いきなり先輩と相撲するの
怖かったやろけど  4番も良く取りきったな
でも
身体の外側からの張り手は大相撲以外は反則や
張り手は体の内側から
肩より外に手が出えへんようにやり 」

そして
よしえを含めた3人の古参の先輩たちの申しあいが始まった

かえでとあおいの取り組みを見ながら談笑していたのとは打って代わり
真剣な表情で土俵に入った
効果的にはげしく組み合い

代わる代わる
激しい取り組みが行われ
張り手の効果的な使い方や
駆け引きなど
身内の試合とはいえ
かえでには
すごく学ぶことの多い時間となった。

「あおい、いつのまにかいろんな技覚えてきよったな
何回か、他のクラブとかと
入ったばっかりのメンバー集めて
合同練習やってるねんけど
そこで仲良くなったいう
やよいちゃんの影響かな
あの子は舞の海とか宇良とか
技の種類多い力士好きらしくて
最初は互いに気に食わんかったらしいねんけど
何回かバチバチに対戦して
知らん間に偉い仲良~なりよったわ
かえでちゃんもそんな仲間ができたらええな」
帰りの車中で
よしえからそんな話を聞いた


千代大海が好きなのに
あんなに色々技を使ってきたのは
そういう事だったのかと
納得がいった

そうして 
それから計5回の練習を経て
迎えた 大会前
最後の練習

かえでも少しずつ相撲に慣れ始めるにつれ
昔、ソフトボールの1番バッターとして鳴らした脚力を活かした相撲を身につけ始め

あおいとは少しずつ互角に相撲が取れるようになり
そのほかの先輩たちにもたまに勝つようにもなってきていた。
かえでとあおいは共に団体戦では先鋒を希望し
それを巡って練習中、激しく火花を散らし合う間柄になっていた
まだ勝ち星ではあおいが専攻していたが
日に日に力をつけるかえでに
あおいも競争心を掻き立てられながら練習に励んでいる
よしえたちもそんな2人の競争を大いに歓迎しながらも
どちらを先鋒に据えるのかを
大いに頭を悩ませていた

そして
練習の最後に
かえでとあおいによる一騎打ちのような
三番稽古が組まれた

1番目は立ち会いからあおいの得意の突きを封じるように勢いよくあおいの懐に飛び込み
自慢の脚力であおいを押し出したかえでが
勝ち
 
2番目は
立ち会いで肩をつき
かえでのバランスをくずしたところて
小刻みに張り手を打ち込み
かえでを押し出して
あおいが勝ち

3番目は
かえでもあおいもぶちかまし浴びせあって
から
激しく突っ張りを撃ち合い
かえでの張り手が
あおいの鼻に当たった反動で
あおいが土俵に手をつき
あおいが制し

4番目は
レスリングように肩を前にして組み合う格好で
右左に
上に下に
揺さぶり合う格好になり
最後は
先輩の意地を見せるかのように
あおいが
かえでを押し出して制し

5番目は
かえでもあおいも息絶え絶えになりながら
胸と胸を合わせてくみあい

組合ながら
押し出すかに思われたが
ここでもあおいが意地の掛け投げで
かえでを土俵に転がして
勝負をものにした

「はいみんな
大会前、最後の練習お疲れ様
団体戦メンバー発表するわね

この一言で
ここまでのあおいとの先鋒争いが
一先ず閉幕した

「先鋒  山岸あおい
 次鋒  宅和かえで
中堅  曽我  ゆき
副将   山田かずこ
大将   川端よしえ
この形でいくからよろしくね」







迎えた大会当日
まずは団体戦
中学の頃やっていたソフトボールで1番を打っていたこともあり
先鋒を希望していたが
同じく先鋒を希望していた山岸あおいに僅差で競り負けける形になり  
団体戦には次鋒として出場することになった
今日も言えまで迎えに来てくれた

家に着くなり

「かえでちゃん、忘れ物してへんかカバン見さして」
と強い調子で迫ってきた

初めての参加ということもあり
廻し、ゼッケン、選手証明カードなど
入念に忘れ物検査をされた
5人しかいないから1人でも欠けたらという
思いがヒシヒシ伝わってきた

前にも
初めての人が葛城相撲クラブのゼッケンを忘れてきて
そのまま団体戦が不戦敗になったことがあったらしい

それから車の中で団体戦のメンバー決めの話になった

よしえ曰く
「前までは個人戦のあとに団体戦だったから
個人戦の成績次第では
かえでちゃんに先鋒お願いする可能性もあったんやけど
最近、ママさん相撲する人増えたから
人数多くて時間のかかる個人戦があとになってもうた」
との
ことだった
さらに詳しく聞くと

団体戦は奈良県なら4つとか
神奈川なら10とか11とか
だいたい決まった数のチームが
5人と決まった人数で参加していて
その分
時間が読みやすいというのもあるが

個人戦は
各クラブの
団体戦メンバーから漏れたメンバーも含めて
基本的にクラブに所属してる人は全員がエントリーし、
相撲クラブには所属しておらず
個人戦だけ参加する
一般参加の人もエントリーしてくることから

大人数になり
時間がかかることも多いので
団体戦を午前にして
個人戦を午後にする
都道府県が多いのだという

また
静岡や鹿児島など
相撲が盛んで
参加人数や参加チームが
共に多い地域では
団体戦と個人戦を別の日に開催する地域もある
とのことだった

あれこれ話したり聞いたりしているうちに
車は奈良市内の大きな公園の駐車場に到着し

会場である体育館に入ると
まわし姿の女たちの熱気で溢れていた

ウレタンの土俵が本土表を中心に5つ敷かれ

まわりに役員用の長つくえ等が置かれた本土表と

そのほかの4つの土俵は
個人戦の予選で使われるものだが
午前中の団体戦まではウォーミングアップ用に
各クラブに1つずつ割り当てられた練習スペースのようになっていた

かえでもよしえに連れられてマワシ姿になり
葛城クラブの面々のいる土俵周りでウォーミングアップを始めた。
いつものマワシに「葛城」という文字の入ったゼッケンをつけると
なんか特別な感じになりいつもより気分が高揚しているのを感じた。

周りの女性たちを見渡してみると
裸にマワシ姿の女性たちに
むしろ、おっぱいやお尻が大きくせり出して
くびれもしっかりあり
そのくせ無駄な贅肉も目立たない
モデルのような女性がたくさん目についた。
かえでは相撲は太った人のスポーツと思い込んでいたが
女性の相撲の美容効果のすごさに驚いた。


またいろいろ会場を見渡してみると、上下スラックスの女性が何人か会場を歩き回ったり
役員席で座ってるのを見つけ
よしえにきいてみた
「あれは今日の試合の審判さんやな
よその県の相撲クラブの人でもあるんやけど
心証悪くすると不利な判定されてもうたりもすることあるから
あったら挨拶したりして
愛想よく接してね。
わたしもたまに他の県の審判にいくねん」

「相撲連盟のおじさんたちちゃうねんな」
「ママさん相撲はじまった最初のときはそうやってんけど
やっぱり、あんまり私らの相撲を男性にまじまじ見られるの恥ずかしいわ
いうことで
女性の審判欲しいな言うことになってんけど
素人はやりたがらへんけど
こういうふうに相撲やってる女性は
他の県の大会を見に行く目的とかでやりたがる人は多かってん
それに審判も
ええ値段の手当は入るねんで」

よしえは手でお金の丸をつくって説明してくれた

審判も
パートみたいな感じになっていたのを知り、かえでは驚いた。

このママさん相撲は
主婦たちの単なる享楽に見えて
いろんなところでいろんなお金が動いてるようだ




そして
団体戦1回戦が始まった
相手は生駒クラブ
葛城クラブと同じくメンバーは5人ギリギリしかいない
大阪にほど近いベッドタウンの町に本拠地を構え
人が集りやすい立地に位置していて
人口が多めの地域なので
一時は20人以上で活動して
団体戦には4チームに別れて参加したりもしていたのだが

最近、勝ち目録の金額の改定で自治体毎の格差ができたことにより
多くの選手が大阪などのクラブに移っていくなどして流出し
今日は5人ギリギリでの参加となったようだ

そして相手側の控え席を見てみると
一際、胸が大きくて
お腹の贅肉もで目立つ女性が
選手たちをあつめて指示を出しているのが見えた
よしえよりもかなり若いがどうやら監督も務めているようだ

先鋒のあおいが土俵前でまわしをパンパンたたいて土俵にはいり
オレンジの布地に生駒というゼッケンのはいった廻しを身に着けた相手の先鋒と
向き合った
相手の先鋒も
まだ体ができきっていない
小太りの体型で所作のぎこちなさから
入って日が浅いことが
感じ取れた

そして
取り組みが始まると
あおいはいつもの張り手から入るつき押しスタイルではなく

相手と組み合うスタイルで
相手と胸を合わせて押し合った
太った女性同士の相撲って
こんなに胸やお腹が押し潰しあって脂ギッシュなのかと
脂ギッシュなのかとかえでは見入った

力比べの最中に何かを見切ったように
相手の足を
引っ掛け
相手を土俵に転がし1勝目

続く
スリムというより
かなりやせ細った相手の次鋒との試合では
相手を真っ直ぐに押し出し
2勝目

そして
相手の中堅との試合も難なく寄り切り
3勝目

迎えた
4戦目
相手は
これまでの3人より少し筋肉質で
いかにもかえでが始めるまでに
抱いてた相撲の人のイメージに近い体つきをしていた

「あおい、こないだの初心者相撲でなかなか
勝てなかった相手ね
どうやって行くのか考えて」
よしえの声が飛ぶ

「分かってます
考えがあります 」
とあおいが返す

そして始まった取り組み
あおいは
相手の中堅にぶちかましを仕掛け
相手の体制をくずし
相手の顔や肩や胸に張り指しを加え

相手もこれに応戦して張り手を
顔や肩などに当ててくる

そして
しばらく打ち合ったところで
あおいはボクシングなどのKOのように土俵に崩れ落ち

抱き上げて助けに来たよしえに
「やれるだけのことはやりましたよ  」
と話し
よしえも
「よく、がんばった、よくがんばった」
抱きしめてから
土俵を降り

いよいよ
かえでの出番が巡ってきた
かえでは

いきなり強そうな相手だけど
どうしよう 


思ったが
組み合いを挑んで

左右に揺さぶり回して
動き回り
相手がバランス崩したところを
片足を捕まえて

奇跡とも言える勝利を上げて
相手の大将との試合にこまを進めた

やっぱり
さっきの胸の大きな女性がでてきた
「かえでちゃんいつもどおりね」
よしえからも声がかかる

かえで正面から組みかかって挑むも
相手の大将のそこはかとない
気迫の前に押し出され

相手大将は鬼気迫る勢いで
中堅、副将と
なぎ倒し

よしえとの大将同士の対決に持ち込んだ
相手大将と土俵中央であたると
アッパーパンチのように下から回し込むつき押しを
相手の肩や頬などに
激しく張り手を打ち込み
相手の大将の渾身の張り手を打ち込み
打ち合うような形になってから
相手大将の女がバテ始めたのを感じ取り
相手の女の廻しを
掴みに掛かり
土俵外に投げ飛ばして
よしえが大将同士の1番を制した

敗れて涙する相手の大将を抱き起こして
労うような声を掛けて 
抱擁を交わしてから


よしえは審判の前に蹲踞し勝ち名乗りを受けた

こんな人が率いるクラブに入れて
よかったと
なんとなくかえでは思った

そして
迎えた決勝戦
優勝常連の若草相撲クラブとの対戦になった。

深緑の布に若草と入ったゼッケンの女性たちからはいかにもというようなオーラが漂っていた

Tシャツ短パン姿の若いメンバー4人が
水やタオルを持っていったり
廻し姿の選手のアップを手伝ったり
甲斐甲斐しく動き回る姿が見えた

きっと
団体戦メンバーに入れなかった人たちだと
思った。
あれを見ると試合に出れている自分は恵まれているし
あの人たちのぶんも頑張ろうと思った。


さっきの生駒クラブとの試合で4番もとった
あおいは休ませるというよしえの考えで副将に
まわり
副将だった曽我さんが先鋒にという
登録変更を行った

副将から下ろされる形になった
曽我さんは

「ママ~次は勝ってね」

かえでより4歳年上の28歳
小学校3年生の息子さんと保育園児の娘さんの声援を受けながら土俵に入った

「ゆき、落ち着いて」
よしえから声が上がる


ゆきは
相手の先鋒の女をぐるぐる引きずり回して
なぎ倒して
まずは
一勝をあげた

どうにか勝ってほっとした表情で
まわし1枚だけ身にまとった胸に滴る落ちるのを見て
母親ならではの美しい裸を見た気がした

そして
副将を外された意地を見せるかのように次鋒の若い相手も激しい突き押しで押し出すも

つぎの中堅との試合で力尽き

かえでも果敢に挑んで行ったが
全く歯が立たずに
土俵の外に運ばれ  

中堅も敗れ

副将に大抜擢された
あおいが
あと一歩のところまで
追い詰めるも敗れ

早くも大将のよしえの出番になった

よしえが意地の押し出しで中堅との戦いに勝利を納めるも

次の副将戦にやぶれ


葛城クラブは敗退となった


「あーーーーー))ーー
悔しーーーーー
負けたーー)ーーー
これが全国の壁なんやな」
とよしえが悔しそうに言った







そして
昼食を挟んでの個人戦が始まった
今回は
個人戦は
一般参加に団体戦のメンバー外だったメンバー
含めて約50人が
参加するようだ

奈良県大会は
各クラブの監督たちの話し合いで
トーナメントの最初の方は
初めて1年以内の若いメンバーと
何年も相撲をやっているメンバーは
対戦が当たらないように
工夫されている

くじ引きのはこを分けているのだ
かえでは53番 あおいは39番を引き
あおいとの対戦は3つほど勝ってからに
なりそうだ

あおいと一緒に初心者ゲームと呼ばれる
右側の土俵に行くと
さっきTシャツ姿で団体戦に出るメンバーを手伝っていた
若草相撲クラブの若いメンバーも廻し姿で
集まっているのが見えた

まずはあおいが御所クラブのメンバーとの試合になんとか勝ち

取り組みが進んでいくと
若草クラブのメンバーのうちの2人はは
それぞれに生駒クラブのメンバーと対戦し
貫禄の勝利を収め

かえでは
一般参加の
いかにも選手証をもらったばかりの女性を優しく押し出して勝利し

2回戦進めていくと
早くも若草相撲クラブ同士の個人戦が
始まった
さっきまでは
一緒に水やタオルを持ってきたり
仲良さそうに手伝っていた2人なのに
土俵に入るとライバル同士で
敵同士という事なのか
立ち会いから激しく睨み合い

始まるやいなや
まるでケンカかのように
激しく顎元や頬や
胸などを張り合い

廻しを掴み合い組みあいに移行してからも
組合ながら相手のとくいな技に持ち込まれるのを
組み替えたりしながら防ぎ合い

さいごは
土俵のウレタンにカカトををひっかけたほうがバランスを崩したすきに
相手に押し込まれて
意地と意地がぶつかり合う長い相撲に決着が着いた

同じクラブ同士でもこんなに激しくなるとはと感じ入ると同時に
同じクラブだからこそ
団体戦メンバーをあらそつたりするようになると
敵以上に敵になるのかと

その同門対決は
かえでの心に強烈ななにかを残した


かえでは生駒クラブの中堅だった若いメンバーと対戦し
胸を合わせて組み合った末
掛け投げを決めてどうにか勝利し

3回戦
あおいは
以前、初心者練習会で仲良くなった
若草クラブの佐久間やよいとの対戦になった
2回戦が始まるまでは仲良く話し込んでいたのに
対戦が決まるとたがいプツリ話さなくなった

そして
土俵外からたがいに激しく睨み合い

意地と意地をぶつかり合わせた

試合はレスリングのように肩を前にして組み合う形で進み
あおいがやよいの後ろ回しを掴んで引き落としで勝利した

かえではさっきの若草クラブ同士の対決で勝利した女に気迫で圧倒され
この大会の取り組みを終えた。

そして初心者リーグの決勝戦は
あおいと
若草クラブの片岡はるなに決まった

あおいとはるなは
ぶちかましあってから
張り手の打ち合いに始まり
ふいのかち上げなどでバランスを崩されかけたりするも
あおいも意地で踏ん張り
崩れかけたところで掴んだ相手の女の廻しをはなさずに持ち続け
その廻しをから 
相手に打った投げが決まり
辛くも勝利した。    

そして
本土表に戻ると

さっき副将を外された
曽我ゆきが 
激しい組み合いの末に
よしえを下し

準決勝であおいの対戦相手として待ち構え

若草クラブの絶対的エースと目される
秋元ゆりかが
同じく優勝候補の
御所クラブ
屋久しおりを土俵に沈め


あおいとゆきによる
葛城クラブの新旧副将対決の取り組みが始まった
この勝負は激しい張り手の打ち合いから始まり
気迫の差で
ゆきが勝ち

全国常連の秋元ゆりかとの
決勝戦に臨み

張り手を掻い潜って組み合いに持ち込まれ

さいごは足取りをあざやかに決められ

ゆりかが絶対女王としての貫禄を示した1番なった。

葛城クラブは
団体戦では優勝を逃したが
ゆきとあおいがベスト4まで勝ち残ったことにより

個人としての全国大会の参加権を得た

かえでは
身体だけでなく
闘争本能をも裸にして闘う女たちの気迫に
終始ひりついた心持ちで
初めてのママさん相撲の大会を 終え
 
次はあおいと
大会本番で戦って勝てるようにと
より 本格的にこの相撲にのめり込んでいくのだった





2022年10月4日火曜日

戸坂さとみ 39歳 子供3人

         「お願いします」
「お願いします 」
        「お願いします」
京都の郊外のとある武道場の土俵
人の輪の真ん中の土俵の相撲の勝負が着くと
外で待つ
まわし姿の
裸の女たちが
仕切りに相撲に勝った女に
押し寄せるようにアピールし
勝った女は
その中から
次の対戦相手の女を指名し
次の相撲を始める

そして
相撲が始まると
出だしから
顔に肩に腕に
胸に
激しく張り手を撃ち合い

組付き合い

闘志溢れる激しい取り組みが繰り広げられる

そして
4番ほど取り終えて土俵を離れていたたさとみは
土俵の端のパイプ椅子に腰掛けその申し合いの様子を見守り
時折
若いメンバーの取り組みに
アドバイスを送る

京都の郊外にある
ママさん相撲の古豪
山城相撲クラブの
申し合いの風景だ

ここに集まる女たちは
みんな国の少子化対策を目的とした補助金制度で専業主婦となった子持ちの女性たちだ

国は補助金だけでなく
ベビーシッター等の斡旋システム等
育児の支援も充実させた

そしてその中で
とある研究者とYouTuberが
女性が相撲に取り組むことによる美容効果の実証と研究に尽力し
至れり尽くせりの国策の中、家で暇を持て余し始めていた専業主婦たちのなかで
じわじわと
本土俵やスポーツジムやウレタン土俵を置いた銭湯でのママさん相撲が広まり始めた
ママさん相撲が始まったばかりの頃は全国大会で
二色浜相撲クラブなどと全国大会の団体戦や
個人戦で優勝を争うことの多い強豪クラブだったが
ここ最近
スポーツを行う女性の健康状態の良化に目をつけ
スポーツサークルに所属する女性には補助金を上乗せするなど
国策で専業主婦となった女性へのスポーツ活動の奨励に力を入れ始めた。
そして
その補助金を目当てになにかスポーツを始める 
専業主婦が増えた

そして
教育費の足しにするために補助金目当てで
スポーツを始める女性 も増え

専業主婦になり子育てに携わるうちに
以前より裸になることに抵抗を感じなくなった主婦たちが 
まわし1枚で始められる相撲を始めるケースも増えてきた。

そういった流れの中で
京都府内でもいくつかのママさん相撲クラブが誕生した
そのなかでできた
梅小路相撲クラブや
亀山相撲クラブなどの台頭したことにより
山城相撲クラブは
個人でも団体でも全国から遠のいて久しくなりつつある



普段から2時間という限りある練習時間の中の大きな大会が近くなってきたので
現メンバー8人で
団体戦の5人のメンバー入りをクラブ内で争う上での重要なアピールの場でもある
申し合いは

大会が近づくにつれ、日増しにその激しさを増していく

山城相撲クラブのように
自治体がスポンサーについた場合には
特に大きな大会には
自治体のメンツも背負って大会に臨むことになり
団体戦メンバーに入ると補助金のスポーツ上乗せにさらに自治体からの上乗せの入ることになる

また
全国大会に出ることになると
団体戦、個人戦などの手当など様々なボーナスもつく

ママさん相撲の
競技としての土俵の上の公式で行われるものは
いつしか
母親たちが養育費を稼ぐために繰り広げる
プロスポーツのような側面も持ち合わせるようになった

だから多くはすこしでも強くなってひとつでも多く勝とうと
強い思いで土俵に臨んでいる
 
それだけお金や名声が動くということは
それだけ責任も伴うということなので
監督も務めるさとみは
時折、市のスポーツ振興部から
厳しい声も聞くようになった。

クラブ内外の個人の争いも激しいが
グラブ間の争いもかなり厳しいものであることを物語っている

そういうわけなので
ママさん相撲を始めて15年のさとみは
そろそろ
引退を考え始めている

かつては
全国大会で二色浜相撲クラブと個人団体で激しく優勝を争った
全国の決勝の土俵で
二色浜のゼッケンの廻しと
山城の廻しが
向き合う姿は
風物詩にもなった

そして
いまの愛車
HONDAのCH-Rは
最後に個人優勝したときに
副賞でもらったものだ

そんな栄光の時代もあったが
最近のさとみの個人成績は
よくて一勝して2回戦止まりがいいとこだった

団体戦の采配などが上手くいかないことも
個人戦に影響していた

朝の団体戦から午後の個人戦への気持ちの切り替え
ママさん相撲の難しいところであり
また
醍醐味のひとつであるかもしれない

 これまで手塩に掛けて入部したての頃から育ててきた山本レオナが
さとみの課した激しい練習の甲斐もあって
入部4年でクラブの絶対的なエースに成長した

団体戦は府内の予選で破れても
レオナだけは個人戦で上位4人に勝ち残り
全国大会にというような状況が続いていた

レオナに続く逸材を育てることが
クラブを強くすることに直結すると言える課題であった

それで
レオナの団体戦での負担も減る

そんな思いもあり

また
レオナ自身をより強く鍛えたい
という思いもあり

定期的にレオナに
刺客を差し向けるように
レオナと誰かを三番稽古をやらせた

澤田リカコや石本あやめなどは
三番稽古でレオナとの対戦を仕向けられ何番も激しい練習を重ねた
練習というよりは
団体戦メンバーの座をかけた勝負だった

そういった
クラブ内の争いの中で
ほかのメンバーも徐々に力をつけて行った

だが
まだレオナには及ばない

今日もレオナにはあやめと三番稽古を
とらせた

そのあとに
 戸田めぐみと朝原かよ
国本きみか
島田かよこの
4人に総当り戦をやらせた  
この4人については
団体戦メンバーを決めるためのものだったが

レオナたち主力を休ませるためのものでもあった。

こうして
その日の最後に
団体戦メンバーを発表すると
練習の帰り際にレオナに声をかけられた
「なんで、最近、あんまり三番稽古とかをやってくれへんのですか?
昔は私と頻繁にやってくれたはりましたよね?」

「うち、次の大会で土俵を降りようと思ねん
うち、の次の監督をあんたにお願いしたいねんけど 
引き受けてくれへんかな?」
「そういことやったんですね、
そういうことなら仕方ないですね
わかりましたやらしてもらいますわ。」
レオナは少し寂しそうな顔をして
次の監督の話を了承した。
 
ほんとうは
この大きな大会から
団体戦とか仕切って欲しいけど

レオナには選手専任で最後の大会を思いっきり楽しんで欲しいから

次の大会からにした

愛弟子のような後輩を思う親心からの
判断だった。

そして迎えた
大きな大会の当日

まずは団体戦から始まった
団体戦は8チームでのトーナメント戦になった

さとみは廻し姿の選手たちの横で
Tシャツにジャージ姿で戦況を見守る


最初は宮津相撲クラブとの対戦になった
先鋒を任せた澤田リカコ
が2人3人とたおし
相手方副将に敗れるも 

こないだの当落選上のメンバーたちの総当り戦で団体メンバー入を勝ち取ったきみかが
副将と大将に
殊勲の金星とも言える連勝を収め

山城相撲クラブは
団体戦初戦に勝利した

勝った時に
クラブの代表として渡される目録を
Tシャツ姿で受け取るのに
最初は困惑していたがもう慣れた

そして次は
城陽相撲クラブとの対戦になった
優勝候補の梅小路クラブや
亀岡クラブほどではないにせよ
油断できない対戦相手だ

このクラブには
大将に
レオナとなんどか個人戦の決勝などで対戦があり
全国大会にも出たことがある
十川ゆかこが座っている

この試合では
きみかと同じく
こないだの総当り戦での団体戦メンバー入りを初めて決めた
かよに先鋒を任せた
クラブに入ってまだ2ヶ月で
こどもは今年
保育園に入ったばかりの楽しみな新人と
さとみは期待をかけている

かよは緊張の面持ちで土俵に入り
相手と視線を合わせた

 まだ若々しさの残るスリムな体つきと
終わんのようにそりたつ胸から
つんのめるように勃起した乳房からも
その緊張が伝わる

団体戦に出ている他の選手に比べると
線が細いが
その見た目に反して
体の芯は強く
入って1ヶ月にして
全国優勝を経験したさとみにも
マグレとはいえ何度か勝ってしまったほどの潜在能力を秘めている

観客席からは
そんな愛しい一人息子にも見守られて
かよの
初めての公式大会の取り組みが始まった

相手からの顔や
肩や胸への執拗な張り手を洗礼のように浴び
頭に来たかよも
または
張り手を激しく
頬や顔面や鼻っ柱に張り返し
それから
相手の両腕を自分の両腕で捕まえ

ぐにゃぐにゃと
素人女性の掴み合いの喧嘩のように
腕を捕まえあって押し合い

そして力比べのような
腕四つになったが

相手を土俵外に押し出す形で
かよは初めての勝ち名乗りを受け
緊張を隠しきれずに
審判から
初めての勝ち目録の封筒を受け取った

取り組み後のかよは
序盤の張り合いで
身体のあちこちが
赤く腫れ

口の中も少し切れていた

それでもかよは
意地で

相手方次鋒との対戦に臨み

もう少しのところまで追い詰めたが

土俵端に転がされ
惜敗したが

かよの奮闘にチームは活気づいた

それでも
最後に控えていた相手方の大将に座る
十川ゆかこの前に
次々となぎ倒され

ついに
レオナとゆかこの大将同士の大1番が始まった。

大1番は
レオナが
経験の差を見せつけるかのように
スキをついて
ゆかこを土俵に転ばせて勝利を収めた


そして
団体戦としては久々となる
決勝戦を迎えた

相手は
さきほど
事実上の決勝戦と言われた
亀岡相撲クラブとの大1番を制してきた
梅小路相撲クラブだ

ここで
さとみは
こないだのメンバー決定戦で敗れるも
朝から手伝いに来てくれていた
めぐみに用意するように伝え、
ゆかこと入れ替えて次鋒で登録した。

そして
団体戦の決勝戦は始まった
先鋒を任せたきみかが
相手の先鋒と次鋒を破り
2勝を上げ
貴重な2つの勝ちをもたらすも
相手方中堅との試合は
熱戦続きでバテた身体で
押し出されて敗れ

ここで
先日のメンバー決定戦で
後輩のかよときみかに不覚をとり
人目を憚らずに悔し涙を流した
めぐみに出番がまわった

敗れても尚
腐らずに練習に明け暮れ

この土俵を迎えた
2年目
これはまでは
強豪相手の団体戦などで
無類の勝負強さを魅せてきた

めぐみは
出だしから激しくぶちかまして
自分に有利な体制でくみあい

相手との差し手争いを
優位に進めて
相手を土俵外に投げ飛ばす
大金星をもたらした

続く副将戦
たまに個人戦でも全国大会に出るような実力者の前には

力及ばず釣り出しで敗れたが
その奮闘に
チームは大いに湧いた
そして
あやめも
あと一歩のところで押し出され
リカコがバテ始めた相手の副将を
力比べの末
土俵外に押し出し

相手方の大将との1戦に駒を進めた

ここで勝てば
つぎは同期入部のレオナに勝てる日も近いかもしれない

そんな思いで
決戦の土俵に臨んだ

相手は団体でも個人でも全国上位の常連

それに勝つということへの野心を胸に秘め
あやめは土俵に上がった

事前になんども映像などで研究してきた相手

あやめの気持ちは昂った

そして
迎えた立ち会い

相手はいつものように激しく張り手を見舞ってきた
あやめも負けずに張り返し

相手の廻しをつかみに行く

そして
ここで相手の手があやめの手に当たったところで
あやめは
相手の手を引き入れ
土俵に転がした

あやめは
してやったりの顔で
取り組みに備えていたレオナの顔を見た
午後からの個人戦に向けて
レオナへの
無言の挑戦状を叩きつけた

こうして山城相撲クラブは
さとみの最後の大会で
久々の全国大会への切符を団体として手にした


そして昼からは個人戦になる
同じ山城のゼッケンをつけたもの同士でも土俵上では敵となり相対する場面も出てくる

それまで和気藹々と話してた同じクラブのメンバー同士も対戦が近づくと話さなくなる

この周りの空気の変わり様を
相撲を始めたばかりの頃のさとみは怖いと感じていたが

それは団体戦のメンバー争いに敗れた者にとっては
雪辱の機会でもあり
団体戦メンバーを外れたメンバーが上位に入り全国大会に個人で出てしまったケースも何度かある

そういうことで
育ててきた後輩の大きく成長したりするから
面白いすら
最近は思えるようになってきた。


軽い昼食を取り終えると
さとみはママさん相撲用の簡易回しを身体に合わせて力いっぱい締め混み

団体戦メンバーから外れたため
昼から会場に入ったきみかと
ウォーミングアップを行った。


きみかは自分と同じくメンバーを外れたはずのめぐみの大活躍を聞いて
ムクっと膨れた表情を浮かべて悔しがった

きみかはきっと
今日
めぐみとの対戦になったら
かなり燃えるだろうと思った

そういったことを通した
後輩の成長が
さとみが監督をやる上での楽しみでもあった

午後からの個人戦の抽選が始まった
抽選は
係員が抽選箱をもって
参加者全員のところをまわり
奇数が出たら
西の土俵での予選
偶数が出たら東の土俵での予選となり

2つ勝ち上がると
本土俵で取り組みを行う


この京都の大会は
予選の土俵は
芝に白線で書いた
簡易的なもので行われる

いきなり本土俵を使わないのは
個人戦には
団体戦に参加した各クラブのメンバーの他
団体戦メンバーから漏れたメンバーや
一般参加と呼ばれる
クラブに所属しない参加者も合わせて
行われるため
本土俵だけでは
時間がかかりすぎるためである

そのため大きな大会で
一勝を目標とする参加者は予め
芝の土俵で練習を積んで来るものもいる


そして
さとみは
東の土俵で
予選に臨むことになった
同じく東側になった
かよときみか、らを引き連れて
東の土俵に向かった
東の土俵では
組み合わせ抽選の紙を審判らに見せて
確認を受け
自分の取り組みの出番をまつ

しかし
燦々と照りつける太陽の元
裸にまわし姿の女たちが
ぞろぞろと歩き回り
どかっと
白線で書かれた土俵のまわりに腰を下ろす

これはママさん相撲ならではのものだろう

そうして
さとみの最初の取り組みが始まった
対戦相手はゼッケンのない廻しの若い女だが

なんか見覚えがある顔の気がした

取り組みが始まり
組んでみて
わかった

かよと同じ日に入部テストを受けに来た女だった

かつては基本的に入部希望者の主婦なら誰でも入部を受け入れてきたが
ここ最近は
練習参加の上で
テストなどを行い
入部者を絞っている

さとみの頭には申し訳なさが過ぎったが
それ故に勝って
ガッカリさせないようにしなければという強い気持ちが芽生え

粘る相手を強く押し出し一勝目をあげた
 
倒れた相手に手を貸して
起こして
「こないだよりかなり強くなったわね」
と声をかけ

久々に
蹲踞をして
定例の所作で勝ち名乗りを受け
勝ち目録の封筒を受け取る

昔は誇らしい気持ちでいっぱいだったが
久々にやってみると
照れくささも先に出る
 でも後輩たちも見てるし
ちゃんとやらないと

そんな気持ちで所作を行った

そして
2回戦は
亀岡クラブのゼッケンをつけた
恐らくメンバー外だった
若い女が相手だった

張り手の応酬で攻めてきたので
張り返してこれに応えた

まだ筋肉の乗り切らないか細い身体だが

メンバーに漏れた悔しさののった強い張り手で
少し驚愕しながらの熟練の経験で張り手をかいくぐり
足をかけ土俵の外に転がした

レオナにもこういう時期があったと

懐かしく思いだし
相手を起こしてやった

そして 
本土俵に向かった
同じく東の土俵にきたかよやきみかもどうにか2つ勝ったようだった

そして
本土俵に戻る途中にある自販機で
昔、レオナによくやっていたように
勝ち目録の封筒を少し破って開けて
中の1000円札で
かよときみかにジュースを奢るというのを久々にやってみた


40近い女性がやると品がないかもしれないが
なんか
若返ったような気持ちになった

そして
本土俵周りから客席をみると
レオナのその2人の子供たちと一緒に
土俵を見つめる
長女の直子の姿があった

たまたま高校の部活が休みだからふらっと見に来て見たのだという

いつも相撲に関して
恥ずかしいとか
バカにしたこという娘だが

ほんとは相撲に興じる母親を
認めていて

そんな母親の最後の土俵を見に来たのだなと
なんとなくその眼差しから感じた

さとみは
直子に

「その子たちにこのお金ジュースでも買うたり」
勝ち目録の封筒を手渡した
昔は
早いうちに負けたレオナに面倒を見てもらうことが多かったのだが
いつしか
そんな、我が子が
レオナの子供たちの面倒を見ていることが多くなった。

そして
組み合わせ表を見てみると
次の対戦相手はきみかのようだった

きみかにしたら
自分をメンバーから外した監督との対戦
心の底に隠してきた恨みの気持ちを爆発させて挑んでくるだろう

監督としてはここでわざと 負けてやって
、自信をつけさせてやりたいところだが
久々に見に来た娘に
強い母親の姿を見せたいから負けたくない
という母親としての気持ちも強かった

この試合は
ガチンコで行くことにした

そして
取り組みが始まると
物凄い勢いと気迫で容赦なくぶちかましを仕掛けてきたきみかにたじろぎながらも
組止めて応戦し
粘りながら
右に左に動き回るくみか
を前に押し出そうとし
廻しをつかみあい
投げを打とうとしたところで
投げを打ち返され
地面に転がされた

勝ったきみかの幼い子供たちは
大はしゃぎで喜び

負けた
さとみの娘の直子は
悲しげに土俵を見つめる

こんな
勝った負けたの光景が生まれるのが
ママさん相撲の裸の戦いの激しさを生む源になっている

そして

かよも勝ち上がったので
またしても
きみかとかよによる
山城クラブ同士の同門対決になった

この勝負も
さっきの勢いそのままに
きみかがかよに勝ち
こないだの下克上を果たす形になった。

その他にも、
今朝、鮮烈なデビューを果たしためぐみが
レオナに挑戦する形になったり
といった対戦もあった

大会はレオナが亀岡クラブの松岡ともみに競り勝って個人優勝を果たし
同じく山城クラブのあやめも
ベスト4に入り
個人でも2人の全国大会参加者を出す形になった

客席でも勝った母親の子供たちが大喜びし
負けた母親の子供たちが悔し泣きをする
ママさん相撲ならでは勝負の厳しさがそこには存在する
母親が勝つと
おやつや食事が豪華になったり
時に車が綺麗でカッコイイ車になったりする
ママさん相撲に興じる母親の子供たちは
そんな勝負の世界の厳しさに接しながら成長する

個人戦で
自分の母親が
いつも母親の相撲の傍らで
いつも仲良く一緒に遊んでいる子供の
母親と当たった時

母親の対戦相手が
いつも世話してくれる
優しいおばちゃんだったとき

そんな
心情の体験を通して
相撲をとる母親だけでなく
見に来た子供たちも成長して行く

これもママさん相撲の
隠れた醍醐味なのかもしれない

最後の土俵を務め終えたさとみだが
まだ
全国大会出場監督として
多くの仕事が残っている

さとみが土俵を後にするのは
まだ、もう少し先の話になりそうだ。