2022年6月24日金曜日

鹿沼ゆり 26歳 子供1人

仕事を辞めて早数年
子供ができて
国の少子化対策の給付金政策と
夫の収入で家庭の懐は安泰なのだが

子供が保育園に入って
しばらく
なんとも、物足りなさを感じる日々を
ゆりは過ごしていた。

悶悶と
スマホアプリのゲームをし

悶悶と
テレビかYouTubeをみて
子供のお迎えまでの時間を過ごす

結婚したての頃は苦戦した家事も
短時間で片付けられるまで上達した。

会社員時代から情報収集等にアカウントを作って眺めているTwitterに
最近、何となく見てしまうハッシュタグがあった

#お相撲したよ♀

最初はたまたまトレンド欄に出てきたのを
偶然誤タップして
開いたのが始まりだった

裸に廻し姿の女性たちが
楽しそうに記念撮影していたり

取り組みでは
一転して
真剣な顔して相撲をとる写真が
多く目に付いた

それから
また
何となく気になって
こんどは
自分で検索して見てみた

温泉や、食事など
映える写真と合わせて
真っ裸に廻し姿や腰にたおるを巻いたの女たち

#お相撲したよ♀
ママさん相撲 と呼ばれて
一部の主婦たちのあいだで盛んになっている
ママさんスポーツのタグだとわかった

たまたま
動画が載っている
ママさん相撲YouTuberのアカウントが
あったので
リンクの貼ってあった動画を見てみた

他のYouTuberとのコラボ動画だったのだが
取り組み以外では
終始おどけて
軽いノリなのだが

いざ取り組みのシーンになると
最初は笑顔混じりで立ち会いに臨むが
取り組みが始まると真剣な顔で
相手を本気で倒しにかかり
本気で組み付き合って
まさに真剣勝負という様相を呈すものばかりだった

ゆりはなぜかわからないがそれに見入った

それから
そのYouTuberの動画を中心に
ママさん相撲のYouTube動画を漁るように見ることが多くなった

そして何個か動画を見ていくと
砂浜で廻し姿でトレーニングみたいなことをやってから、相撲をとっているものや

スーパー銭湯の区画内で
真っ裸に専用の長いタオルを腰に巻いて
相撲を取っている動画もあった

そして
それから
他の動画とは打って変わって
真剣な雰囲気で
女相撲の合宿をする動画に行き着いた
しこを踏み、師匠に胸をかりてのぶつかり稽古、
そして
気迫と気迫がぶつかり合うような鬼気迫る申し合
彼女たちは自分を磨くためのお稽古事として道場に入門して
真剣にママさん相撲に取り組む女性たち
なのだが

そのなかの1人の女性のインタビューの
「子供に何かあった時に守れる強さが欲しいから」
という言葉が
ゆりの心に刺さった

強さか···············

女同士の本気の相撲のぶつかり合いを
ゆりはやってみたい衝動に駆られた

動画のなかにもゆりの家から行ける範囲の
土俵のある銭湯がロケ地になっていた

翌日
ゆりは子供を保育園に送り届けたあと
その銭湯に行ってみた

相撲用のタオルは
貸し出し用で置いてあると紹介されてあったので
とりあえず
石鹸やタオルなど
ふだん温泉などに出かける時と同じ持ち物を車に積み込んで
その銭湯に向かった

最近、できたばかりのスーパー銭湯だった

ゆりは
動画で見た通りに
身体を洗って
プレイルームという本来は子供を遊ばせるための区画のなかの土俵スペースに行き

レンタル用にかけてあった
相撲用の長いタオルを腰に巻いて
鏡をのぞいてみた
身体がなんか弱々しいけど
自分もちょっとそれっぽいかな
ゆりは思った

そして腰にタオルを巻いたままウレタンの土俵に入っていった 

そこには
休憩用のベンチで1人の女性が
腰にタオルを巻いて土俵の近くの
休憩用の椅子に座っていた

腰にタオルを巻いていれば対戦相手募集中の印で

その相手に声をかけたら
取り組みをしようという流れになりやすいと
YouTube動画でいわれていたので

ゆりは声をかけてみた
ゆりと同じく150cmほどの小柄な女性で
身体の線もゆりに似て細く、
いかにも華奢な女性という感じの人だった

聞いてみると
この若い主婦も
ゆりと同じく
ルミ相撲のYouTubeなどを見て
今日初めてここに来たのだが

相撲とる相手がだれも居なくて
呆然と座っていたのだという


それならばと

ゆりは一緒に相撲を取ることを持ちかけ
その女性は快諾した

そのまま
2人は
初めて土俵に入り仕切り戦で向き合い

「はっけよい のこった」
声を合わせて立ち合って
土俵中央で組み合った

最初はぎこちなく抱き合うように押しあっていたが
相手の女のお椀型の胸の柔らかみや
二の腕に力がこもっていく感じを
感じ取り
自分も負けじと力を込めて
相手の廻しタオルを握る

そうして
正面から相手を受け止め
相手の女もゆり
を正面からうけとめ

正面と正面から
力を競い合って
押し合う形になった

 ゆりと相手の女は正面から身体を密着させて押し合い
相手の体温が高くなるのを互いに感じつつ
気迫と気迫を互いにぶつかり合わせていた

互いに投げを打とうと取り組み前は考えていたが

膠着状態がしばらくつづき
ゆりは息がきれ始め
相手の女も
息が絶え絶えになっているのを感じた

「ここいらで」
「そうですね、決着はまた今度で」

どちらからともなく
そんな会話を交わし

勝負は水入りとなった



それから
女性と一緒に洗い場に行き
体の汗を流しがら
いろいろと話をした

相手の女性の名前は
黒田まり

このスーパー銭湯の近所に住んでいるらしい

それから
湯船に浸かって
から
ロビーで連絡先を交換し

いつの日かまた再戦する約束をし
ゆりはまりと別れて
車に乗った

女同士で正面からぶつかり合って
戦い合うって
気持ちイイ
ゆりは思った

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