2024年3月24日日曜日

中園まみ 32歳 子供2人

とある日曜日の夕暮れ前の体育館
まみは裸に廻しのみを締め込んだ姿で
「ママさん」相撲という
主婦スポーツの大きな大会の準決勝の土俵に上がった

勝てば全国大会の出場という
大1番の土俵

土俵の向こうに立つ
対戦相手は
午前中の団体戦を同じチームで共に闘った
板野くるみ
午前の団体戦で共に戦った仲間と
個人戦での全国大会出場をかけて相対する

同じ「鳴門」の文字が入ったゼッケンの文字が入った者同士が
向き合う時
午前は共に力を合わせてチームの勝利のために力を合わせた同士で
午後は敵同士として相対するということを
何度経験しても
まみは勝負の世界の無情さを感じる
そして
同時に
「鳴門相撲クラブ」内の
団体メンバー争いなどのライバルである
同じクラブの
入会も年齢も近いともみとの対戦には燃えるものを感じる


まみは
この「ママさん相撲」を始めて
約3年が経つ

こういった
「ママさん相撲」
「ママさんバレー」
のように広まった背景には

政府は少子化対策の政策として
妊娠した、あるいは子供が居る女性に
対しては
子育ての負担を少なくして
より多くの子供を産み育てやすくするために

それまでの仕事の月収の9割
もしくは月25万円を
子育て給付金として
その女性に毎月給付する制作を開始し

新たに妊娠などした際は
出産に関する費用の給付など

手厚い給付金政策を始めた

これにより、巷には専業主婦となった女性が
増加し

また
様々な自動化家電やサービス充実により

余った時間で
幅広く新たな仲間や刺激を求める専業主婦たちの間で
スポーツなどの様々なサークル活動の
ようなものが
主婦スポーツなどが盛んになり

その中に
美容とエクササイズ目的の
「相撲」
も、そういった主婦スポーツの1つとして
広まった
この敢えて裸でとる「相撲」は
とある医学博士が
裸で肌と肌を触れ合わせることや
敢えて裸を衆目に晒すことなど
による美容健康効果があることを発見し

また、会議室程度のスペースがあれば
あとはマワシやフンドシなど用意する
だけでできる手軽さ
そして
専業主婦として生活することを通して
人前で裸になることに以前ほど抵抗を抱かなくなった
これらのことが相まって
この主婦たちの「相撲」は
ママさんスポーツとして広まりを見せ
各都道府県に
「ママさん相撲クラブ」
が次々発足していくほどの盛り上がりをみせている

また、この「相撲 」に興じる主婦たちが
新たに妊娠出産に至る確率が
ほかのママさんスポーツに比べても高い部類
にあったことから

政府もより
この
「ママさん相撲」
を普及させようと

競技者登録した女性には
段位などに応じた割増給付金や
取り組みごとの懸賞金
優勝賞金を出すことを始め

自動車メーカーなど

大企業もスポンサーに着くようになり
賞金などの内容も充実して行き

収入を増やしたい女性などの
参加も増えていき

ママさんスポーツの代表的な種目のひとつとなった

取り組みの内容も
最初の頃は
がっぷりと胸と胸を合わせて組み合って押し合う力比べが主流な
形だったものが

女性たちの隠れた闘争欲求や
勝利への探究心も相まって

投げ技が徐々に増え

低く相手の下に潜り込んだり
いぞリのような
アクロバティックな取り組みが増えたり

賞金目当てに参加する
なりあがり目的の女性の増加により
ルールが改定され
張り手が解禁されてからは
張り手の用いられる頻度が増え

張り手の余りの多さと激しさから
「ママさん相撲」
に関しては
打撃系格闘技

といわれるくらい
激しい取り組みが増えていった
 
中園まみも
そんな闘争的欲求を
満たしたくて
「ママさん相撲」を始めて
3年の月日が流れた

結婚して子供ができる前は
外食チェーン店の正社員として
勤務していたが

他の分野へ進んだ大学の同期たちが
活躍しキャリアを進めていく姿
引け目を感じていた

そして
そんな同期たちのうちの何人かが
結婚と出産を機に退職し
「ママさん相撲」
始めた

まみも
そんな同期たちと話すうちに
自分もやってみたくなり

結婚と出産を機に会社を退職したあと

便利な家電や
ベビーシッターの補助制度などの子育て支援で充実し
家事や育児に余裕が出てきたのを機に 
近所の「ママさん相撲クラブ」
に入会した。

そのクラブは
これまで数回、全国大会に
団体でも個人でも出場する程の強さがあり

クラブ内での
団体メンバー争いも
激しく

まみは最初、メンバーに入れなかった。

ともみはまみより早く
メンバー入りし

団体戦でも個人戦でも
多くの勝ち星を重ねていった

そんなともみの背中を追いかけて
まみも努力を重ね

試合や練習での対戦で全く歯が立たなかった
先輩たちと徐々に互角に渡り合えるようになり

気がつくと
ともみと
大将の座を競うまでに力をつけた

それから
互いに
練習の申し合などから
まみとともみは白熱し
自他ともに認めるライバル関係になった

互いの手の内を知り尽くしたまみとともみは
取り組みの開始と共に

相手の得意手を封じようと

こねくり合うように
張り手を出し合い
間合いを封じあった

そして
胸を合わせて
互いに背中に手を掛け合って投げを打ち合い


また正面から
豊満な胸と胸を合わせて組み合って

力比べに入った

まみの右手とくるみの左手は
互いの廻しを防ぎ合い

勝負は膠着状態に入ったが

まみが積極的に

胸を合わせて背筋で押し

上下に揺さぶり

まみとくるみの身体と身体の間の距離が少し空いた

くるみがすかさずまみの頬を張り

まみも張り返し

張り合いになるも
まみが一瞬の隙をみつけて
なげの体制を作ると

ともみの身体は土俵に転げ落ち

まみは初めての全国大会への
勝ち名乗りを受け
懸賞金の封筒を受け取った
思えば前の
ともみとの対戦も
こんな感じの
対戦で
前はともみが全国への権利を貰っていたなと
思い返した

決勝では

団体戦で苦渋を舐めさせられた
徳島クラブのメンバーとの対決に臨み

激しい張り手の打ち合いの末
初めての徳島チャンピオンの
栄冠にも輝いた

そして
まみに敗れたともみも
3位決定戦で勝利し

まみに遅れて
個人での全国への出場権を手にし

全国大会での再戦を
まみとともみは誓い合った。


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