ママさん相撲の名門
二色浜相撲クラブの団体優勝の記念写真
5人女たちが裸にまわし姿で満面の笑顔をうかべて、優勝盾やトロフィーなどを手に収まる
その後ろに4人の女たちがTシャツ姿でやや控え目な笑顔で映っている
その後ろの真ん中に映るのが
さえこだ
ママさん相撲の大会の団体戦は
3人の大会もあるが
公式の大きな大会では5人が多い
そうなると
総勢9人の二色浜相撲クラブの会員から
5人のメンバーを
個人戦の成績や
どうしてもクラブの代表の富子がメンバーを決めきれなかった時に行われるクラブ内での選考試合などの成績などをもとに選ぶことになるのだが
さえこは
いつも
団体戦では次点の補欠メンバーになることが多かった
だから
いつも大会の個人戦のあと
団体戦では
誰かがケガなどしたら代わりに出られるようにまわしにTシャツ姿で
仲間たちのサポートなどをすることが多かった。
さえこはその団体戦メンバーの座をいつも
スンデのところで逃すことが多かった。
だから子供たちからも
「おかあさん、今日はお昼はお相撲おやすみなんだね」
と、外れる度に言われていた。
「西方、次鋒、原田ときこさん」
鳴り響くアナウンスをさえこは
悔しさ混じりの心持ちで観覧席から聞いて
土俵を見つめた
この大きな大会の団体戦の決勝の土俵に
自分もあと少しで立てたのかと思うと
クラブが優勝する嬉しさ
と同時に悔しさも
心の中に揺らめいた
いつも
団体戦メンバーの最後のひと枠を
ときこと争うことが最近、多くなった。
クラブに入る前も夫と
夜な夜な営みの前の戯れで相撲をとり
夜のニュースで欠かさず
相撲のニュースをチェックするぐらい
元々、好角家だったさえこは
国の少子化政策にアテ込んで
大手宅配運送会社のセールスドライバーの仕事を辞めて
家庭に入った。
セールスドライバーは
結婚して子供ができてからも好きで続けていた。
国の政策が始まった頃に
2人目の子供を妊娠して
夫などと相談して仕事を辞める決断をした。
そして、2人目の子供が保育園に入り
時間に余裕ができたときに
ママさん相撲の存在を知り
さえこも初めてみることにした。
元来
支店内の売り上げ1位を何度か取ってしまうほど、負けん気と向上心が強いさえこは
どうせやるならと
ママさん相撲黎明期より、名門として存在した
二色浜相撲クラブを選んで入会した。
全くの素人で始めたママさん相撲でも
さえこはセールスドライバーの仕事で
重い荷物を運んで鍛えた体の強さを武器に
成長を重ねた。
土俵そして
すぐそばにトレーニングに最適な砂浜があるなど
恵まれた練習環境もあって
小さな大会などでは
たまに優勝してしまうこともあった。
しかし、大きな大会の個人戦では
同じクラブのだれかに優勝を阻まれることも多かった。
そして、そのことを悔しく思うさえこは
家でも子供を背中に乗せて腕立て伏せなど
トレーニングに励み
普通なら仕事を辞めて
出産などを経ると
脂肪が垂れ下がったり
だらしない体になっていくことが多いのだが
さえこはむしろ
産後1年半でも
仕事を辞める前より力強く引き締まった
モデルかアスリートのような体つきになっていた
そういう意味でもママさん相撲を始めた成果はさえこの身体には現れていた。
それでも大きい大会ではなかなか優勝できず、
団体戦にもなかなか出られないことにはもどかしさを感じていた。
クラブのメンバーとは
土俵の外ではものすごく和気藹々として仲が良いのだが
裸になって練習用のふんどしを締めこんで土俵に入ると
互いの競争心からか
張り詰めた緊張感が漂う。
申し合や三番稽古などは
あまりに白熱しすぎて
喧嘩気味になるときも時折ある
練習中でも
特に原田ときことの取り組みになると
さえこの心の中にもより強いものが籠る
近所の漁師町の女性で
今も時折、夫の手伝いで
魚の荷降ろしなどをやっているらしい
元々はスポーツなど運動はなにもやって居なかったらしいが
夫の仕事の手伝いなどで
足腰が鍛えられ
さえこのようにモデルのような引き締まった身体に
浅黒い肌色の身体
そして
さえこの全身に日焼け止めを塗りたくった
白い身体の取り組みは
周りにも
白と黒の対決として
クラブ内では大いに注目が集まる
2人とも練習時間以外のトレーニングも欠かさずやっており
体のくびれ具合や
胸のせり出し具合も
日に日に互いに競うかのように
その見た目の美しさを増していっていた
個人戦の成績が互角になることが多く
特に
大きな大会前は
練習中の三番稽古や
申し合などの対戦内容などで
どちらかが
5人制の団体戦のメンバーに入ることになることが多く
日頃のクラブの練習は
そんな
当落選上の2人の競い合いの時間の1部でもあった
さえことときこは入会した時期も近く、学年も同じで、
子供2人の歳も近く
最初の頃は、よく、土俵の外のトレーニングの時間でもペアを組み、手押し車なを共にし、
活動のない日でも
互いの家に招き合って自主練習をするほど仲が良かったのだが
ある夏の日
さえこの日焼け止めの臭いで
邪魔をしてくる
と因縁がまじく言ったことで
練習中に取っ組み合いの喧嘩に
なりかけ
まわりのメンバーが仲裁に入り
場は納まったものの
それ以来、互いのライバル心もあって
あまり、お互いに口を聞かなくなってしまった。
ここ1年、どちらかがメンバーに入るとどちらかがメンバーから漏れるということが多く続き、
練習中でも、距離を置き
互いに必要な会話しかしなくなっていた
ときこのほうも
「今日はさえこさんが出てるからママは出てないんだね」
とか
子供から言われたりして
それとなく
さえこを強く意識するようになっていった
クラブの練習でも
練習終わり間際に
クラブの代表の
富子から
三番稽古に
さえことときこが
指名されることが多くなっていった
クラブの仲間たちも
この三番稽古の意味がそれとなく察しが着いていたので
三番稽古となる度に、毎度、鼓吹を飲んで見守っている
こないだの練習では
スタミナに分があるときことの
三番稽古で4勝5敗と
ときこに勝ち越されて
今日の大会の日を迎えていた
このところ
ときこに負けることが多かったが
今日の午前の個人戦では
久しぶりにときこに勝った。
そのあとはトーナメントの早い段階で負けて
入賞こそならなかったが
自分の状態が上向いてきていて
ここからもう一度、取り返そうという
相撲に対する気持ちの盛り上がりがさえこに芽生えていた。
そんなこんなな中で
2人とも
3人目の子供を妊娠した。
さえこもときこも
相撲をはじめたことで
身体つきなどがより魅力的になり
夫からの夜の誘いが増えていた。
さえこもときこも
悦んで、その誘いにのり
似た時期に
妊娠して、
3人目の子供をそれぞれ
無事に出産した。
そして2人は
同じ日の
『産後1年以内のママさん相撲に関する説明会』
に参加することになった。
この会では
まず、
産後の身体で相撲に取り組む際に注意すべきことなどの座学を受講し
記念会食のあと
化粧廻し姿に着替えて
子供を抱いて記念写真を撮影し
その日集まった母親達同士で
相撲大会を行う
という流れのイベントである
国策の成功を祝う意味合いもあるので
この大会での優勝賞品等は
高級車や高級腕時計、貴金属類など
とても豪華なものになることが多い。
故に
取り組みはいっそう激しいものとなり
取組後の女性たちと土俵の母乳で白みがかった光景は大会の風物詩ともなっており
「白相撲」とも呼ばれる
産後1年の会を前に
1度、クラブに顔を出すことになり
さえことときこは
久々にクラブの練習に参加した
「少し太ったんじゃないの」
「あんたもね」
久々に海風の下で
服を脱いで練習用のふんどしに着替える時
陰部にあたる海風が心做しか心地よく感じられ
なんとなく、開放的な爽快な気分になった
そして
クラブの主催者の富子に促されて
2人は「白相撲」への抱負を語った。
「サエコさんに買って高級車を貰って帰りたいと思います。」
「ときこさんには勝ちたいと思います。
負けません」
妊娠、出産等で相撲を離れていても
互いへの消えないライバル心が
2人の口からは感じられた
それから
2人を中心に
その場に居る
メンバーや関係者と
記念写真の撮影が
行われ
練習に入っていった
そして
2人には
それぞれ
さえこには、花房たかえ
ときこには、嶋えつこ
と
練習パートナーが
富子から
指名され
それぞれに練習に入っていった
この流れ
クラブから「白相撲」参加者が出た時の
いつもの流れなのだ
さえことときこも
入会して間もない頃
「白相撲」に参加する先輩メンバーの
練習パートナーに選ばれたこともある
ここでは
練習パートナーを練習相手に
少しずつ相撲の勘を取り戻しつつ
主に若いメンバーが担う
練習パートナー役からの
出産や育児などに関する相談に乗り
また、相撲の技などを教えて
若いメンバーを育てる役割も
期待されている。
そして母乳がでるうちは
原則
特に常設の相撲場では
土の土表はあまり使わないことになっている
土俵の土がつくことにより乳房の衛生状態と
母乳が飛散することにより
土俵の土の衛生状態に
共に良くない
と考えられているからだ。
さっそくさえことたかえは
砂浜の一角に足で土俵を書いて練習を始めた。
小太りの2人が相撲の練習をする光景は
本土表でモデルみたいな体型の女たちが練習するのより
ある意味、相撲っぽいかもしれない
向こうでも、ときことえつこが書いた土俵で練習を始めていた。
四股や股割りなどのウォーミングアップを終えると
まだクラブに入会したばかりのたかえの実力を把握するために
三番稽古に入った
仕切り線を挟んで
蹲踞の姿勢でたかえと向き合った
家ではたまに夫に頼み込んで
練習相手になって貰って相撲をとることも
たまにあるのだが
久々に裸にふんどしを締め込んだ
若いたかえの裸体をみて
ひさこは密かにドキドキした
そして
「はっけよーい、残った」
と
声を合わせて
最初の取り組みに入った
たかえの若い身体がまっすぐぶつかってきて
さえこが受け止めることになって
バチンと
音が鳴った
そしてグイッと互いの後ろ廻しを掴んで引き付け合い
身体を密着させて
力比べになった。
この立ち会いの時の音、 この女性の身体ならではの感触
全てが久しぶりで
立ち会いからの全てが快感だった
そして
たかえが果敢に投げを打とうとしてきたところを
どうにか防ぎ
ややバランスを崩したところを
逃さずにたかえを地面に転がして
どうにか先輩の貫禄で
勝利した。
その後も4番ほど続けて取り組みを行った。
たかえは
技や手数は少ないが
相撲を始めたばかりにしては
組み合った時の圧力が強いと
感じた。
最後の1つ前の1番は
たかえに押し出され不覚を取った1番もあったが
最後の1番はたかえを吊り上げて
どうにか制した。
そのあと
自分の母乳や
砂で汚れた身体を
海に浸かって洗い流して
たかえと
いろいろと話した
たかえとえつこは
同じ日に入会したが
お互いをまだ下の名前ではなく
花房さんと嶋さんと
苗字で呼びあっているらしい
そういえば
入って間もない頃は
ときことも
原田さん、岸田さんと
苗字で呼びあってたなと思い出した。
そして
同期のえつことの関係について聞くと
土俵の外では仲はいいが
土俵に入るとバチバチした間柄になるようだった
入ったばかりの頃はまだ
ママさん相撲のルールの張り手禁止をしらずに
練習中にえつこと対戦した時に
向こうが先に頬を張ってきたので
コッチも張り返して
それから
肩や溝落ちや
胸上などを張り合い
になった1番が
あったこと
その相撲に
決着がついたあとも
えつこが掴みかかってきそうな感じになり
たかえも受けて立つ構えを見せたので
周りの先輩たちが
間に割って入り話し合いになったが
練習前のお茶の用意に
たかえがなかなか来なかったことに
えつこが腹を立ててたらしい
たかえもえつこにいろいろと思うことがあったり
と
それまで遠慮勝ちだった
二人の間に
急激に確執が広がりそうになったが
その後
2人だけで食事に行って和解したらしい
先輩たちからは
「ここのお相撲は張り手禁止だから」
と厳しく注意された
という話も聞いた
たかえとえつこの2人だけの食事では
互いにこれまでの事を謝りあったあと
終始
子育てやこれまでなど
の話をし
食べ終わる頃に
「わたし、嶋さんには負けたくないと思ってるの」
「わたしもみんなに負けたくないおもってるけど花房さんには特に思ってるよ 」
と
互いのライバル心を確かめ合う話になり
土俵の下では仲良くなったが
土俵の上で対峙する時
周りからあの二人
喧嘩でもしてるのかと
たまに心配されるぐらい
激しい取り組みになることが増えたらしい。
自分たち自身に関することもそうだが
たかえを育てることに関しても
ときこには負けたくないな
と
さえこは思った。
その後
互いにぶつかり稽古をして
押しや受け身の動作を確認して。
最後に
1番だけ相撲を取って
さえこたち、この日の練習は切り上げた。
そして
たかえと何度か練習をしつつ
白相撲の日を迎えた。
前夜に久々の試合用のまわしを試着してると
夫に後ろから抱き寄せられた
ママさん相撲には夫婦円満の効果もあるようだ
子供たち3人ともを連れて
車で会場にきた
同じようなタイミングで駐車場に入った
ときこの姿も見えた
ときこ一家に挨拶し
並んで会場に入った
それから
1番下の子は
市の係の担当の人に預け
子供たちは会場内の子供スペースに行かせ
まずは座学を聞いた。
そのあと
県知事なども招いた記念会食をし
食事の最後に
今回の白相撲のトーナメントの組み合わせ抽選が行われた。
同じクラブ同士では上の方まで当たらない仕組みになっており
ときことは勝ち上がれば決勝であたる
組み合わせになった
それから
化粧廻し姿に着替えて
まずは
参加者全員で集まって記念撮影をし
そのあと
年内に生まれた子供を抱いて
個人ごとの記念撮影になった
記念撮影中の参加者は
写真では笑っているものの
1回戦であたる相手の近くを通るときなどは
どこかお互い
気まずかったり
殺気立ったりした空気になった。
それから
化粧廻しを外して
試合用のまわしに衣装直しをした
今日の白相撲では
自治体から貸し出された下がりをつけて
取り組みに臨むことになっていた
同じクラブの
ときことウォーミングアップを一緒にやった
こうしてウォーミングアップをするのは
入ったばかりの時以来かもしれない
「今日は日焼け止め塗らないんだね」
と冗談めかして声をかけられた
やっぱり
この人には1番負けたくない
と
思った。
それから
取り組みに入った
「ママーー、がんばって~」
と子供たちの歓声が響く土俵
久々だけどいいなとさえこは思った。
どうにかトーナメントを勝ち上がった
自分たち以外は
練習してきてないのか
と思っていたが
なかなかキレのある動きをする人が多くて
意外と苦戦した。
飛び出る母乳の感じのほかに
組み合った時に感じる
少し硬くなった乳房や胸
そして
脂肪がのってやわからくなった女の体の
感触
これらは
こういった白相撲独特のものかもしれない
と
さえこは思った。
そして
ようやく迎えた決勝の1番
相手は1番、倒したかったさえこだ
向こうもなんとか
勝ち上がってきた様子だった。
立ち会い
土俵の上にて
目を合わせさえことときこの
負けたくない気持ちが
眼差しを介して交錯する
約1年半ぶりの対決になった
久々に土俵の仕切り線を介してみた
浅黒い肌
会場のなかでも
常に意識しながら目線を送ってきた
そのときこが目の前に居るさえこの胸の中に高鳴るものを感じた。
「かまえて、まったなし、はっけよーい、残った」
その審判の合図に合わせて
バチンと勢いよく中央でぶつjかり
2人は土俵中央で久々の力比べを楽しむかのように組み合った
そして右に左に主導権を奪い合い
互いに左右の腕をかちあげて体制を入れ替え
そしてマワシを再びつかみ合って
組み合ったところで
衝撃で2人のさがりが外れ
さえこがかちあげた両手でときこが後ろにふきとび
さらに組みかかったところで
さえこが足をウレタンの土俵と吹き出た母乳や汗で足を
すべらせときこだけがマワシをつかみ
万事休すかと思われたが
押し込まれた先に落ちていた耐滑素材のさがりがさえこの足に引っかかり
こんどは足下の母乳や汗でバランスを崩したときこを
土俵の外に投げ飛ばし
今日の勝負はさえこが勝った。
さえこは土俵際に崩れ落ちた時子に手を貸し
ときこもそれに応じて立ち上がると
ふたりは健闘を称え合うかのように肩を抱き合い
それぞれに清々しい表情で
その後の表彰式に臨んだ。
サエコの子供たちからは
「ママ、やったね~ 新しいトロフィーだね」
「新しい車がもらえるねーーー」
と声が上がり
敗れた、ときこの子供たちはうつむき加減で言葉少なな様子なのを見て
トキコが
「牛肉1年分貰ったから、今晩は焼き肉ね」
「牛肉1年分貰ったから、今晩は焼き肉ね」
と肉をみせて声をかけると
子供たちは
やったーーー
と元気な声を取り戻した。
でも、内心ときこは
やっぱり子供たちはわたしがさえこさんに勝つとこ見たかったんだろうな
と思いつつ
さえことときこ
は
貰ったおむつなどを抱えて
子供たちを車に乗せ
会場を後にした。
それから
二色浜相撲クラブでは
また別の1人が産休に入り
ちょうど人数が10人になり
団体戦のメンバーはAとBで固定制になった
ときこはえつことAチームに入り
さえこはたかえと一緒にBチームに入ることになった
これでさえことときこの対決の機会は減ると思われたが
クラブ内の競争意識の低下を危惧したの代表の富子の発案で
クラブ内の順位戦も定期的に行なわれるようになり
対決する機会は定期的に確保された。
さえことときこは
順位戦を勝ち上がって
お互いに大将同士で団体戦の決勝であたりたいね
と話し合うようになり
競い合いつつも支え合う関係を築いていった。
ママさん相撲の普及に伴う
政府の既婚で子持ちの女性に対する給付金政策による美容効果と
それに伴う、少子化抑制効果は
政府の期待通りのようだ。
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