2021年4月25日日曜日

石黒富子 27歳 子供1人

富子は海辺のホテルで朝を迎えた。
かねてより交流のある佐々木が浜女子相撲クラブの練習会の2日目の朝

昨日出会ったライバルと言えそうな1人の女性の存在が

最初は相撲クラブ同士の付き合い程度のつもりで参加した練習会だったが

朝起きたときの心持ちを張りのある物にしてくれた。

同じクラブのフミカを誘いホテルの朝食会場に向かった

せっかくお誘いだったので

本当は自分たちのクラブからもっと大人数で来たかったが

構成メンバーは主婦ということもあり
富子のクラブからは富子とフミカの2人だけでの参加となった。


政府の給付金を伴った少子化抑制政策で専業主婦

少子化抑制政策で専業主婦になる女性たちの間では水泳や陶芸、スポーツバイク等さまざまなものが流行した。
そのなかの一つに、美容効果と必要な物は「まわし」か「ふんどし」1枚という手軽さから
いわゆる「ママさん相撲」と呼ばれるスポーツもそんな主婦たちの流行り物の中に含まれていた。
この時代の女性たちはほかの時代に比べて裸になることへの抵抗は薄れていることもあいまって。
マワシ1枚で女性同士が裸で相撲を取り合うことも意外にも受け入れられていった。
日頃の有り余ったエネルギーや、主婦業のストレスを発散するはけ口としても需要があった。

富子もそんな世間の流れの中でそれまでの工場の仕事を辞め
夫のサーフショップを手伝いながら
家事子育ての傍らサーフィンを楽しむといった日常を過ごしていた

そんな折
ママ友から

誘われる形で相撲を始めた

はじめは素っ裸にふんどしなんてと
恥ずかしく思っていたが

浜辺や公園や誰かの家での馴染み同士の練習や
地域の大会などに参加し

たまに上位に入って賞や景品を貰ったりしていくうちに
"ママさん相撲"の魅力にとりつかれていった

家で使っている食洗機も
家電メーカーがスポンサーの大会の優勝で貰った物だ


 富子たちがビュッフェ形式の食堂で朝食を選んでいると1人の肌の白い女性から声をかけられた

同じ神奈川に住む 岩田ノリコ

昨日、出会った相撲への気持ちをさらに燃え上がらせてくれそうな存在だ。


歳は富子と1つ違いで
体型も身長もそっくりで

昨日のノリコとの申し合い等での取り組み結果は
やや富子に分があったもののほぼ互角

力ならノリコ
技なら富子

そう富子は分析していた

富子はノリコと朝食をともにした

そして

今日の自由練習では
一緒に練習する約束をした。


「今日はあったかいから海につかりながら13番稽古なんてどうですか」

ノリコからの提案を富子はは快諾した。

部屋に戻ると
富子は練習着とも言うべき赤いふんどしを締め込み
自分の裸の身体を見て

少したくましくなったなと感心してから

Tしゃつと短パンを上から身にまとった

ママさん相撲では
かさばらないふんどしが主に練習着として使用され
マワシは試合用になることが一般的だT

最終日の今日は

練習会場の砂浜では
あちこちで

即席のペアができて

取り組みやすり足等の練習があちこちで行われていた。

各々の女たちが締め込んだ 青や白や緑や紫など色とりどりのふんどしの色が
晴れ渡った砂浜に鮮やかだった


富子も砂浜の膝下まで水につかる水深の場所でノリコと向き合った
160センチの締まったモデルのような体に透き通るような素肌に
とんがって突き出たまるい胸
緑のふんどし



これからの相撲人生で壁になりそうな存在

負けたくない
そんな気持ちで13番稽古の最初の立ち合いに入った

そうして

富子とノリコは互いの負けたくない意地と意地をぶつかり合わせながら
何番も組み合った

水の中で好敵手の女の身体の力を感じ

ときには
海に投げ落とされ

ときには富子がのりこを海に投げ込み

そんな取り組みが何番も続けるなかで
二人の稽古は熱を帯び

最初13番と約束していた取り組みは

互いの優れた体力も相まって20番以上に及んだ

気がつけば

胸下までつかるぐらいに深い場所で
ノリコと富子は
組み合っていた

ここで富子はノリコの足をかけて
水に沈め
「ちょっと休憩しましょうか」
「そうね、あそこのコンビニでコーヒーでも飲みましょ」

そして

そのまま
今日の練習を終えた。

2人ともかなり疲れて
コンビニで休むころには

体に乳酸がたまって、もう動けないぐらいに疲れ切っていたのだ

ノリコと富子は
どこかの大会での再会と再戦を約束し
ノリコは佐々木が浜の代表に帰りの挨拶をし
富子はフミカの練習終わりをまって別れた。


ここからの相撲生活楽しくなりそうだと富子は思った。

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