2021年4月17日土曜日

岩田ユリコ 26歳

政府の給付金を伴った少子化抑制政策で専業主婦になったユリコは
とある企画に応募した。

最近、よく企画される"女性限定の相撲の練習会"だった。



少子化抑制政策で専業主婦になる女性たちの間では水泳や陶芸、スポーツバイク等さまざまなものが流行した。
そのなかの一つに、美容効果と必要な物は「まわし」か「ふんどし」1枚という手軽さから
いわゆる「ママさん相撲」と呼ばれるスポーツもそんな主婦たちの流行り物の中に含まれていた。
この時代の女性たちはほかの時代に比べて裸になることへの抵抗は薄れていることもあいまって。
マワシ1枚で女性同士が裸で相撲を取り合うことも意外にも受け入れられていった。
日頃の有り余ったエネルギーや、主婦業のストレスを発散するはけ口としても需要があった。

ユリコのように結婚はしつつも仕事や日常に追われ、
近所や周辺の主婦同士の交流がほとんどなく
「相撲」を始めて見たはいいが
その練習相手も身近におらず、
たまに参加する大会だけが取り組みの練習の機会で
家ではもっぱら、一人でできる体操や四股踏み等のトレーニングしかできないという
環境の人も多かった。

また今回の合宿は主な会場が砂浜なのも、海辺育ちのユリコには大きかった。

参加条件に"泳げること"
とあったのだ

合宿の日程の中に遠泳も組み込まれていた。

ツアー会社ではなく
佐々木の浜女子相撲クラブという
クラブ主催形式のオープン参加型の1泊2日の合宿

自身もスポーツクライミングの趣味を持ち
理解のある夫は快く その参加の旨を承諾してくれた。

当日、ユリコはスポーツバッグに荷物をまとめ
朝5時半に家を出た
それにしても相撲は荷物が少ない
学生時代にやっていた剣道に比べると荷物が軽い。

朝8時頃
宿舎の高級なリゾートホテルに着き、
荷物を置き、ふんどしを締め込み、その上からTシャツと短パンをまとい
シャワーサンダルを履いてホテルから集合場所の砂浜に向かった。


砂浜に着くと
まずはみんなで輪になって
クラブの代表の女性の話を聞き
参加者全員の自己紹介と流れていった
今回の参加者は総勢10人あまりで

関東だけじゃなく北海道や四国など
いろんなとこから着てる人も居るようだった


ぼやーっと
見回しながら話を聞いてると

一人の女性と目が合った。
その視線は
色白のユリコとちがって色黒ながら
身長や体型がゆりことすごく似ている女性だった。

ユリコもその色黒の女性が気になり始めた。


その後 Tシャツをや短パンを脱ぎ
準備体操をしたあと

コーンを3つ置いての簡単なアジリティトレーニングや
1:1でのビーチフラッグのような運動をして

遠泳に入った
ビーチフラッグで
たまたま あの色黒の女性と対戦になった。
すんでの差でユリコが勝った。

やっぱり Tシャツを脱いだ体格もユリコとそっくりだった。

遠泳中も気になった

その女性がユリコの1つ前を泳いでゴールした。

ユリコは心にメラメラした物を感じた。

そして
宿舎に昼食を摂りに帰るときに話しかけてみた
「たしか、神奈川の湘南でしたよね? 私も神奈川で横浜に住んでるのでよろしくお願いします」

「あ岩田さんね、石黒です。神奈川だと同じ大会で当たれそうねよろしく」

「楽しみですね石黒さん。 負けませんよ」


食後は
すり足や四股踏みから始まって
二つの土俵をロープで仕切っての申し合いに入っていった

女たちが裸にふんどし1枚の姿で浜辺の土俵を取り囲み
そして
土俵の中では2人の女と女が
相撲を取り合い、組み合い

勝負がつけば
勝った方によってたかって取り組みを申し込む

手を上げて申し込んだユリコが呼ばれた

そして 正面から組み合い
3番取り組んで疲労の見える相手をなんとか
土俵の外に押し出し

申し込んできた富子を相手に指名し

2番目の取り組みに望んだ
なんとなく負けたくない相手

そう意識し合う二人の取り組みは
激しく身にまとったふんどしをつかみ合い
激しくその肢体と肢体をぶつかり合わせながら

押し合いながら
仕掛け時を探り合っていたが

すんでの隙を突いた富子が
ユリコを砂浜に押し倒す形で

最初の対決に軍配がついた

ここから この二人は幾度も大会などで対戦していくことになる

負けた悔しさもあったが

ユリコはこの活気ある空気を求めて
この練習会に参加したのだと心の底から感じた。

そうした
活気の中で
練習会の1日目が終わった。

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