2016年11月5日土曜日

とあるまちのママさん相撲の人 3

殿田なぎこはママさん相撲の決勝の土俵の上にいた
相手は同じクラブの久住けいこ
なぎことは偶然にも同じ日にクラブに入会し
それ以来
練習でも試合でも
なぎこはけいこの背中を追いかけてきた
団体戦ではいつも大将はけいこ
なぎこはいつも副将

そんな
目の上のなんとかのような存在との対決になぎこは意識を燃やしていた

傍から見れば
共にクラブを牽引する存在の両雄の対決に注目は集まった

前も決勝でけいこに
最後にけいこに勝ったのはいつだったか

そんなことに思いを馳せてるうちに
審判の仕切りで
両者手をつき

取り組み始まった
両者激しく当たり合い
ちょうど乳房と乳房がぶつかった

そして正面から左右によじれながらの長い組合いの末
ほんの好きをつかれて
今日もなぎこはけいこに土俵に倒れた

けいこに勝つには


けいこに勝ちたい

何かを変えたい


そう思っていたとある夜

突然 夫が 地元に帰って家業を継ぎたいと言いだした

変化を求めていたなぎこは

表立っては渋々ながらも了承した



引越しに伴って
このクラブでの最後の練習に臨んだ
練習とはいえ最後にけいこに勝ちたい
そう思って
いつもより丁寧にまわしを締め込んで
更衣室で鏡の前に立ってみた

相撲を始めた当初よりひきしまった身体が鏡の前で広がっていた

けいこに最後に勝ったのは
団体メンバーの最後の1枠を三人で争った取り組みだったとなぎこは思いだした

なんとか押し出しで勝ったが
そのときのけいこは
なんとも悔しそうな顔が思い返されてきた

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