2014年4月23日水曜日

ラ 裸 螺(2)

日進女学院にこの春入学した千春はキャリアウーマンに憧れて、この学校にすすんだ
多くキャリアウーマンが所属した部活動と聞いて
千春もまた修道部の体験入部に行ってみた
最初 部の名称から 茶道とかお稽古事や作法の練習でもやるのかと思っていた千春だったが、その予想は大きくくつがえされた
先輩たちが部室に入ってきて
着替えたら
生まれたままの裸の姿で出てきて
思い思いに準備運動を始め

そして武道場の至る所で
取っ組み合いをはじめていったり
真っ裸で綱上りやバーベルなど筋トレに精を出す先輩もいる

そんな衝撃の中終えた体験入部初日だったが
千春はなにか不思議な好奇心のような気持ちに従い、二日目も参加してみることにした
二日目は前日60人ほどいた1年生が、衝撃的な活動風景にどうようしてか20人ほどにまで減っていた
二日目は千春たち体験入部の1年生もはだかになることを求められた

1年生たちはまだ自分のかごがないので用意された段ボールばこに衣服を入れ
恥じらいながらも生まれたままの姿になった

このあと1年生みんなで体操をした

最初は恥ずかしがってた千春たちも
慣れてきて徐々にはだかの解放感を感じ始めていた

そして案内担当の先輩が
大きな箱と紙を持ってきた
「これから1年生の大会種目 お相撲を体験してもらいます
今から一列に並んで渡す紙に名前を書いてください」


千春は
全員なにも身に着けずに裸という特殊な光景に
高揚感と違和感を覚えつつも
なんだか不思議な高揚感を感じながら同級生の列に並んだ


千春は自信を持ってた胸の大きさを見比べたり
いろんな体系のこがいるなと感じながら
あたりを見回しながら列に並んだ


見回してると
白人特有の透き通るような白い肌の女の子と
目があった
外国人は胸が大きいものと思い続けていたが
その子のものは千春より少し小さいというか
日本人の中でも小ぶりな部類に入るバストサイズだった
 


その子が番を終え布を受け取ると
自然と千春と目があい
千春は笑ってごまかして会釈した


この列の中の同級生と
これから競い合って
もうすぐ誰が一番か決まるのだ


千春の他の同級生も緊張の面持ちで細長い紙に自分の名前を書いて
引換に
少し古びた黒くて長い布を受け取っていた
千春も自分の番が来て
やるからには勝ちたいな〜
と考えながらマジックで紙に名前を書き、先輩に渡して
長い布を受け取った
長い布には
半分ぐらいの長さがあるマジックテープが縫い付けられており
これでどんな激しい取り組みにも耐えられそうにできていた


今日の1年生トーナメントの組み合わせは
少し特別な形にできていた


トーナメント表が3重になっていた


よこに二つ書かれたトーナメント表のを見ると
○○の敗者-○▽の敗者
とかかれ
横のトーナメント表にも同様のことが書かれていた


つまり1回戦で負けても
2回は戦えるチャンスがあるのだ


これは先輩や顧問の先生が
体験入部の部員の実力や特徴を見れるようにというシステムだった


つまり千春は一番取組数が少ない1戦目に勝って2戦目に負けたとしても最低2人と戦うことになるのだ






今日は3年生の先輩たちは
普段部活以外で学校にいる時のような制服姿で
見守っている


裸で1年生部員たちの世話を焼いているのは
2年生の先輩たち8人だ


メガネをかけた先輩による事前の説明が始まった
昨日はかけてなかったが
今日は自分たちはれんしゅうしないということで
メガネ姿に裸の先輩が備え付けの白板を前に話し始めた
だが説明は
簡単なあいさつと
ルールと大会説明
そして
長い布の着用方法の実演だけだった


そして
「この部では
創造の意思をはぐくむことを大切にしているので
技術や細かいことは教えません
だから、実戦の中で考えながら勝ち方を覚えていってください」
とのことだった
名前は知らないけど
細くて小さいメガネのあの人なら勝てるかなと思った


くじを引き終えた1年生たちは
3面用意された
マットに紐で円を敷いた土俵を
くじ引き通りに東西に分かれて座った


千春は西の5番のくじを引き
西に座った
東側に目をやり
誰が出てくるのかを
気になりながらも
ほかの同級生の取り組みを見守った


上昇志向が強い女子の集まりと言える
この部を志す1年生だけあって
目にした数番はどれも
激しい組付き合いばかりだった


そして千春の番が来た
<西がた緒方千春さん 東方 山田マーサさん>
呼び出しの先輩に読み上げられ
土俵の円の中に入ってみると
向こうに立っていたのはさっきの白人の女の子だった


女の子は
顔は笑顔を浮かべつつも負けん気の強さを目から讃えながら
寸分先に入って千春を待ち構えていた


千春は緊張の面持ちで土俵に入り
マーサとまなざしを交錯させ
土俵正面で出先輩に促され
例をして土俵中央に入った


そうして土俵中央で
もろ手をつきマーサとにらみ合った


『はっけよい のこった』


審判役の先輩の合図とともに


 マーサがものすごい勢いで組みついてきた
千春もなんとか組み止めたものの
勢いに押され
千春は土俵中央に仰向けに寝かされかたちで
勝負がついた


マーサは金色の長い髪をなびかせながらしたり顔で勝ち名乗りを受け


千春はあまりにも不様な負けに
赤面しながら体を起こし
次の取り組みにむけ体を起こし
隣の土俵に移っていった

2014年4月3日木曜日

ラ 羅 裸(1)

陽が落ち夕日が差し込み始めた
春の夕暮れの放課後
階段を地下まで下り
地下の闇の中で
煌々と灯りの灯る一室

入口のガラスのショーケースに
飾られた
盾の最下に自分の名前が刻まれてるのを確かめ
木下未久はこの鍛え合の間に
いつものように入っていった

ここは白鵬女学園
近年、政財界等の中心を担う女性を多く輩出する名門女学園である

この学校の校訓
追究
鍛練
競合

この3つの教訓を具現化した部活動として
この学校の志ある入学者から近年
人気を集める部活動として
修道部は存在する

修道部とは
女性武道家
小野龍華が考案した
格闘技の体験を通して
女性の自律心と向上心
創意工夫の心を育てる意図ではじまった
武道教育カリキュラムである
特徴としては
第一に
活動は女子の五感感覚の研磨のために
競技時は初学年が腰に布を巻く以外は裸であること

初学年は相撲形式
それ以降はレスリング形式
というように学年で種目が変わること
そして何より
安全のため
打撃技は禁止
など
安全のための数種類のルール以外は
ルールはほとんどないこと
だから
相撲は倒すか押し出したら勝ちで
レスリングは
相手を10秒以上地面に押さえ込んだら勝ちなのである
ビジネス界でも多数、この部の出身者が活躍している
この学校のこの部の出身者である
女性政治家
大河原国枝に憧れ
未久もこの部活動を選び
先週行われた
全国大会で初めての優勝を手にした
大会といっても
この部を置く学校は
全国でも日進女学院と白鶴女子
の3校のみである
また
個々の自律心と競争意識を育むという意図もあり
大会はすべて個人戦で行われ
団体戦は行われない

つまり
他校の部員のほかに
この部屋にいる
女子全員がライバル同士でもあるのだ

未久は玄関口の表札に手をかけた

大関 木下未久

優勝一回では変わらない位置だ

そして未久の表札の上には
横綱 横山ゆり

普段は未久とは親友のような関係であるが
この時間では
強く意識し合うライバル同士だ

実際未久とゆりは
同じ学校同士でありながら

各大会で
壮絶に火花を散らしあい
死闘を繰り広げてきた間柄だ
それでも
いつも僅差でゆりに勝利を持っていかれていた

だが 先週は初めて
未久がゆりに勝ったのだ

鍛え合いの間に入り
服を脱ぐと
ふたりは
あまり口を聞かなくなる

2年生までは先輩たちの壁をこえようと 二人で練習していたが
今では大会の度にどこかであたるので
部活動の時間はお互い
距離をおくようになってしまったのだ