2013年11月23日土曜日

五村五種競技会

12月の砂浜に書かれた土俵

生まれたままの姿で
譲れないものをかけて争い合い
まわし1枚で相撲を取り合う2人の若い女

 ちえみはふなこのまわしを引き込み
ふなこもそれに負けじと踏ん張り
2人の女の身体は重なり合うようにして
砂の土俵の上に倒れた
 



この付近の5つの村が毎年、1月に開いている
5村競技会のあかり村の代表を決める一戦であった

勝ったのはちえみ
5度目の挑戦で初めて
この座を手にした

5村競技会は各村18歳から30歳の未婚の男女各一人が
出場して行われる競技会だ
5つの競技の勝ち負けで優勝を争う
男は弓矢、競馬と陸の競技を
女は10000メートル走に始まり、
そのまま海での遠泳
そして浜辺での相撲
と海の競技を担当する

代表に決まった2人の男女は
陸の男と海の女として
祭りまでの間共同で生活し

そのまま夫婦として添い遂げた者も多い

今年は陸の代表に長年思いを寄せてきた龍之介が決まっていた
だからちえみとしても
この予選会にかける思いに一入のものがあった

年の瀬と正月を思いの凜太郎とともにすごし
迎えた本番の日の前日
明日身に着ける水着とマワシの点検を終え
これまで練習を共にしてきた龍之介との最後の夜を終え

~迎えた当日~
ちえみは他の4人の女たちとともにスタートラインにつき
合図を待った
龍之介の活躍で他村をなんとかリードしている状況だ

1月の空に水着1枚
寒さとともに村の名誉の責任も体にはいりこんで来るような
そんな心持のなか

合図の号砲とともに
ちえみたちは走り始めた

レースは高校時代から
同じ高校の陸上部でライバル関係にあったあつことの
抜きつぬかれつの争いになった

陸では勝っていたちえみだったが
水泳では差を詰められ
先にゴールラインを割ったのはちえみだった

高校時代から意識し合ってきた2人は
ゴールした後
言葉を交わすこともなく
土俵を隔てて別れ
2人は互いをにらみ合うようにして
水着を脱ぎ捨て
まわしを締めこんでいった

最終種目
相撲
5人の女が総当たりで相撲をとりあい
順位ではなく勝ち数が村のポイントに加算される

ちえみとあつこは共に全勝で勝ちつづけ
直接対決の時を迎えた

激しい張り合いの後

ちえみとあつこは真正面から組み合い
互いの互いへの思いをぶつけ合うかのように
力をぶつけあった

大きさを競い合うかのように胸と胸をぶつけ
体をくねらせながら主導権を伺いあっていた

しばらくすると
水泳で力を消耗していたちえみの身体から力が抜け
ちえみの身体は砂場にたたきつけられていた

ちえみは大会の集計の時間
自分の不甲斐なさに暮れながら過ごした

ちえみの村とあつこの村は
得点同点1位で並んでいた
この場合は
海の女二人による組打ちによって優勝が決まる
ただ今まで戦ってきた女の疲労を考慮し
この戦いに挑むか否かは女の意思にゆだねられる

ちえみは真っ先にまわしを外し戦う意思を示し
向こう正面のあつこもそれに応じるようにしてまわしを外した

2人の女は海に入り
生まれたままの姿で組み合った

この戦いにおいては過去に何人か死者が出ており
そういう意味でも
女の意思に委ねられるのだが
2人は迷わず戦っての決着を望み
この決戦に至った

どちらかが降参するあるいは命を落とすまで続くこの戦い

水の中での動きに自信があるあつこはわざと倒れこみ水中戦に持ち込んだ

2人の女は水の中で上になり下になり
争った

転がりながらより深いところに引きずり込もうとするあつこを
力では分のあるちえみが懸命に振り払い
今度は逆にちえみがあつこを陸に引きずり出して地面にたたきつけ
あつこのおなかに龍之介とみたプロレスビデオに映っていたジャンピングニードロップ
をしかけ
動けなくなっているあつこの後ろに回り込み
首を締め上げたところで

あつこのやつば村側からタオルが投げ込まれ
ちえみの村の優勝になった

ちえみと龍之介は晴れて結ばれ
本当の夫婦になった

ちえみとはこの後も何度か
私的に会って戦い
このライバル関係は子の代
孫の代まで続くだろう

若い男女が
自分の村の名誉をかけて戦うこの祭りは
こうして幕を閉じ

来年もそのまた来年も続いていくのであった

2013年11月20日水曜日

湯場争い

 とある山あいの農村では
山の温泉水の恵みで
八カ所の湯治場があった
その湯治場は男子禁制の場で
"とうば"と呼び称せられていた
文字にすると湯場と書くのだが
女が闘う場所という意味での闘場という意味も込められていた

八つの湯場にはそれぞれ神棚が祀られ
その主となった女は右胸に印を入れてそれを表す
主となった女は優良な子宝に恵まれると信じられており
女たちはその主の座を虎視眈々と狙いあっていた

主の座に挑戦する女は左胸に印を入れて、主の女と鉢合わせるように湯場に行く
そうして胸に印を入れた二人の女が湯場で出会ったとき
闘いは始まる

湯場はこのような女たちの争いに対応するため
床のタイルや浴槽は角を落とすなどし
女たちが無用なケガをしないように作られていた

この村で家電メーカーの技術者の夫とその両親とともにくらすまゆみもまた、湯場の主を狙うひとりだ
今日は初めて左胸に口紅で印を描きいれ、湯場に向かった

脱衣場で服を脱ぐときまゆみはまわりを窺った
もし主の女と出会う前に自分と同じように左胸に印を入れた女と出会ったらまずはその女と戦わねばならなくなるからだ
いつもは女友達で談笑しながら入る湯場が今日はまったくちがって見えた

服を脱ぎ、体を洗い清め
主の女の登場を待った

そしてしばらくすると右胸に印の入った女が体を洗い清め湯船に向かってくるのが見えた
この湯場の主、きぬえだ
二人の女は湯場から人気がなくなると
立ち上がり、眼差しを向き合わせた
まゆみは闘いを前にし
乳房は前にせり出し硬直し
陰毛はそばだち
異様な興奮に包まれているのを感じていた

二人の女は湯船中央で向かい合い
まずはまゆみが平手をきぬえの頬にうち、きぬえもまゆみの頬に平手を打ち返した

しばらく繰り返した後
2人の女は腕四つで組合い

2013年11月9日土曜日

社内相撲~アクシブ生命第3営業部~

 土俵際でマワシ一枚の姿で向き合うケイコとマチコ
五年前に一緒に研修を終え配属された二人が土俵上で若い肉体をぶつけ合い雌雄を決する
 アクシブ生命の精鋭女子社員の巣窟、第3営業部承認試験での一コマである

アクシブ生命の第3営業部は 営業適正が強く認められた女子社員の巣窟だ その部の要員は個人法人問わず、社が重点を置く営業対象の新規開拓に配置され 相撲の愛好者であった第3営業部の創始者たる現会長、大岡悦子が 3営女子のチャレンジ精神、競争心、勝負度胸の情勢を目的に相撲を研修から行事にまで幅広く 取り入れていったのがはじまりである >〜五年前〜
マチコはケイコと一緒に西心橋支店に配属された 配属の日 マチコが机に着くと先輩たちからの ‘入社おめでとう‘ と大きく書かれた添え書きの色紙とともに 白くて真っ新な長い布がまかれて置いてあり 付箋紙に ‘1週間後、歓迎会やります‘ というメモ書きが貼られていた ここでの歓迎会とは歓迎相撲大会のことだ マチコの脳裏には 1週間前の研修の相撲大会 そして一緒に配属されたケイコの優勝した姿が浮かんだ なんでまた相撲なんかとも思ったが 1度は負けたケイコに勝ちたいとも思った それからマチコは人知れず特訓に励んだ ~そして1週間後~ その日の仕事を終えた西橋支店第3営業部の8人の女たちは会社地下の土俵に集まった 初めて案内された土俵 マチコとケイコはそのまるで相撲部屋のような本格的な作りにびっくりした そして土俵を見ると2人の女がすでにまわし姿になり土俵を掃き清めていた 「番付表の下から二人がああして先に来て掃除をするのよ」 と先輩から説明された 壁の一角には番付ごとに部署員の名前が記された表札がつるされていた 全支店の女子社員の間で2か月ごとの対抗戦や年に一回の優勝大会でその番付が営業成績と同時に 争われるのだ そして今日の結果も繁栄される